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奉日本-4
奉日本-4-2
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「まぁ、俺達が入ったときには乱闘のときにぶつかったのか、壁の一部が崩れていたけど……そこはユースの人間に見つからなくてよかったよ」
久慈が言うには、有栖が倒した詩島組の連中は気を失い、手錠を掛けられていたそうだ。それは彼女が松下優也を保護し、管理人室へと連れて行ったあとに救援を呼ぶまでに起きられたら困るからだろう。
その後、ユースティティアの援軍が来たが、一方で極秘の任務もあり、時間帯の問題もあり、駆けつけてくれたのは二人だけ。その人数では倒した詩島組の連行と松下優也の保護で手一杯のようで、部屋の調査は翌日以降の後回しにしたようだった。
「その様子を遠目から確認していた俺達がユースが撤退したあとに証拠を回収ってわけだ」
「なるほど」
「しかし、マスター。あの珍妙なお願いは何だったんだ? 一時間ほど、詩島組がコーポ松下に到着するのを遅らせて欲しいってのは。それに、ユースが来るかも、というのも前情報として教えてくれたが、それも何故解ったんだ?」
奉日本は詩島組と警察との証拠があるであろう場所と当日の予定を提供する代わりに、詩島組がコーポ松下に到着するのを一時間ほど遅れるようにして欲しい、とお願いをした。それは了承され、久慈は一時間ほどの妨害工作をしてくれたそうだ。
「一時間の妨害は面白いことになるかな、と思っただけです。ユースが来たのは可能性の一つと久慈さんへのリスクの提示ですよ」
「そうかい。まぁ、俺達としては詩島組がいるとこに乗り込んでドンパチする必要がなくなったから良かったけどな」
微笑む奉日本に何かしら他の考えがあったのだろう、と察しながらも久慈は追求はせず、頭に浮かんだ言葉は音にせずグラスの酒と一緒に飲み込んだ。
久慈が言うには、有栖が倒した詩島組の連中は気を失い、手錠を掛けられていたそうだ。それは彼女が松下優也を保護し、管理人室へと連れて行ったあとに救援を呼ぶまでに起きられたら困るからだろう。
その後、ユースティティアの援軍が来たが、一方で極秘の任務もあり、時間帯の問題もあり、駆けつけてくれたのは二人だけ。その人数では倒した詩島組の連行と松下優也の保護で手一杯のようで、部屋の調査は翌日以降の後回しにしたようだった。
「その様子を遠目から確認していた俺達がユースが撤退したあとに証拠を回収ってわけだ」
「なるほど」
「しかし、マスター。あの珍妙なお願いは何だったんだ? 一時間ほど、詩島組がコーポ松下に到着するのを遅らせて欲しいってのは。それに、ユースが来るかも、というのも前情報として教えてくれたが、それも何故解ったんだ?」
奉日本は詩島組と警察との証拠があるであろう場所と当日の予定を提供する代わりに、詩島組がコーポ松下に到着するのを一時間ほど遅れるようにして欲しい、とお願いをした。それは了承され、久慈は一時間ほどの妨害工作をしてくれたそうだ。
「一時間の妨害は面白いことになるかな、と思っただけです。ユースが来たのは可能性の一つと久慈さんへのリスクの提示ですよ」
「そうかい。まぁ、俺達としては詩島組がいるとこに乗り込んでドンパチする必要がなくなったから良かったけどな」
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