有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』

ぴえ

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「一色、何を言っている」
 一色の予想外の発言に佐倉は慌てて、割って入った。
「有栖の抜けた分は俺が前線で指揮を取りながら対応します」
「そんなことが――」
「出来ますよ。前線で戦うことも、指揮も。そもそも、自分にできんことを部下に出来る出来る言うて指示する上司はおらんでしょ?」
 一色が自信満々に断言するので、佐倉はたじろいだ。
「失敗は許されんぞ」
「失敗しません。成功させます。それなら、有栖が抜けることは問題ないでしょ?」
「コーポ松下の件はどうするつもりだ。失敗したら……」
「責任は上司である俺が取ります。メディアにはボランティアのような言い分と人身御供となる人物がおれば、それなりに軽減は可能でしょう」
「お前がユースティティアから抜ける方がダメージが大きいだろうが……はぁ、解った。勝手にしろ」
 佐倉がため息と舌打ちを交えそう言うと、これ以上は時間の無駄だと判断したのか二人に背を向けた。
 その様子を呆気に取られたように見ている有栖に、一色が振り返る。
「ボーっとしてないで早く行け」
「イチさん……」
「自分のワガママ通して、誰かに迷惑かけたくなかったら、その手で救って来い」
「――はい!」
 有栖は一色に一礼するとダッシュでその場を出て行った。
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