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有栖-4

有栖-4-4

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 有栖の発言の意味――彼女が過去に一度、元上司からのセクハラ被害により大きな騒動を起こしたことを理解しているのは、その場にいる数名だった。その中には佐倉と一色も含まれている。
「あー、ちょっと俺が話をしますわ」
 そう言って、一色が睨み合う有栖と佐倉の間に入った。
「一色、そいつを説得しろ」
 疲れたように、匙を投げたかのように佐倉は一色にそう言った。それは彼なりに有栖の信念が自身では曲げることができないと察し、信頼関係のある一色に任せることが適切と判断したのかもしれない。
「有栖、間に合わん可能性は高い――それでも行きたいか?」
「はい。守れる可能性があるなら賭けたいです」
「黙って行くこともできたやろ? 何でそうせんかった?」
「それは……」
「自分の気持ちを伝えれば、納得してくれると思ったか? 残念やったな、お前が言うてることは綺麗事や。甘い考え、理想ばっかりで、組織のことを考えていない綺麗事」
 一色の言葉が有栖に刺さる。彼女自身でも解っていた。組織のこと。そこに属する隊員のこと。全てのことを考慮すると正しいのは佐倉の考えだ。有栖の考えは失敗すれば組織と、そこに属する隊員に被害が生じる。彼女も解っていたのだ。
「イチさん、自分は……」
「まぁ、それでも汚い考えに染まって、頭の中が腐ってまうよりは良いやろ」
 一色は快活にそう言うと豪快に笑ってみせた。周囲の者達――有栖すらも驚く中、彼は笑顔を崩さず、続けた。
「行ってこい、有栖。あとは頼れる上司に任せとけ」
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