28 / 47
有栖-3
有栖-3-5
しおりを挟む
「警察……え? どういうことですか?」
一色の発言を有栖は理解できず、重要であろうキーワードだけを呟くと、詳細の説明を求めた。
「警察と詩島(しじま)組、というヤクザが共謀して創った案件や。まぁ、詩島組がしたかったことに警察が乗っかった形みたいやけど」
「もうちょっと詳細に説明してくれないと解りません」
「せやな。詩島組は知ってるか?」
「武闘派の反社組織ですよね? 結構、色々と問題を起こしては捕まってる」
「そうそう。その詩島組は警察と協力関係を結んでる。詩島組が問題を起こしても、警察に上納金を納めることで内密に釈放してもらったり、警察の依頼で詩島組が問題を起こしたり」
「腐ってますね、相変わらず」
「とはいえ、昔の話で、今はその関係も薄い、とは聞いてたけどな。それでも薄いながらも繋がりはあった、ということやな」
「それで、今回の自分が受けた案件に警察と詩島組がいた、としてその意図は何ですか?」
一色の説明で、警察と詩島組の関係は解った。しかし、ユースティティアにコーポ松下の調査をさせたかった意図が見えない。
「近々、極秘の任務があるやろ?」
「はい、自分とイチさんも呼ばれているやつですね」
「その件はユースティティアが担当することになったやろ? 成功すれば当然のことながら大きく報道され市民の信頼を得ることになる。これが警察にとっては面白くないわけや」
「面白い、面白くないより、大事なのは巨悪を捕まえ、悪事を事前に防ぐことだと思いますけど」
「正論やけど、世の中を掌握したい奴らからすれば綺麗事や。せやから、警察の一部がユースティティアの失敗を作ることに動いた。それがこの案件や」
「失敗?」
「これはユースティティアが正式に受理した案件として処理し、調査すると失敗するようになってる。極秘任務の成功の裏にはとんでもない失敗がありました――そんなニュースを流したいんやろ。マイナスの要素を市民に見せて、少しでも信頼を失わせておきたい。そんなとこや」
一色の話を聞いて、有栖は呆れてため息を一つ。心底くだらない、といわんばかりだった。
「この案件、幽霊調査ですよ? それが解決しないところで、そこまで騒ぎにはならないし、問題にもならないでしょう」
そう言った有栖に対し、一色も笑ってくれるだろう、と思っていたが彼の表情は何かに耐えるように、悔しさを噛みしめるように、辛そうな表情をしていた。そこから有栖は何かを察したように、一つ尋ねる。
「イチさん。このコーポ松下の件……このまま調査を続ければ、どうなりますか?」
有栖の質問に、一色はゆっくりと言葉を吐き出す。
「松下優也は――殺される」
一色の発言を有栖は理解できず、重要であろうキーワードだけを呟くと、詳細の説明を求めた。
「警察と詩島(しじま)組、というヤクザが共謀して創った案件や。まぁ、詩島組がしたかったことに警察が乗っかった形みたいやけど」
「もうちょっと詳細に説明してくれないと解りません」
「せやな。詩島組は知ってるか?」
「武闘派の反社組織ですよね? 結構、色々と問題を起こしては捕まってる」
「そうそう。その詩島組は警察と協力関係を結んでる。詩島組が問題を起こしても、警察に上納金を納めることで内密に釈放してもらったり、警察の依頼で詩島組が問題を起こしたり」
「腐ってますね、相変わらず」
「とはいえ、昔の話で、今はその関係も薄い、とは聞いてたけどな。それでも薄いながらも繋がりはあった、ということやな」
「それで、今回の自分が受けた案件に警察と詩島組がいた、としてその意図は何ですか?」
一色の説明で、警察と詩島組の関係は解った。しかし、ユースティティアにコーポ松下の調査をさせたかった意図が見えない。
「近々、極秘の任務があるやろ?」
「はい、自分とイチさんも呼ばれているやつですね」
「その件はユースティティアが担当することになったやろ? 成功すれば当然のことながら大きく報道され市民の信頼を得ることになる。これが警察にとっては面白くないわけや」
「面白い、面白くないより、大事なのは巨悪を捕まえ、悪事を事前に防ぐことだと思いますけど」
「正論やけど、世の中を掌握したい奴らからすれば綺麗事や。せやから、警察の一部がユースティティアの失敗を作ることに動いた。それがこの案件や」
「失敗?」
「これはユースティティアが正式に受理した案件として処理し、調査すると失敗するようになってる。極秘任務の成功の裏にはとんでもない失敗がありました――そんなニュースを流したいんやろ。マイナスの要素を市民に見せて、少しでも信頼を失わせておきたい。そんなとこや」
一色の話を聞いて、有栖は呆れてため息を一つ。心底くだらない、といわんばかりだった。
「この案件、幽霊調査ですよ? それが解決しないところで、そこまで騒ぎにはならないし、問題にもならないでしょう」
そう言った有栖に対し、一色も笑ってくれるだろう、と思っていたが彼の表情は何かに耐えるように、悔しさを噛みしめるように、辛そうな表情をしていた。そこから有栖は何かを察したように、一つ尋ねる。
「イチさん。このコーポ松下の件……このまま調査を続ければ、どうなりますか?」
有栖の質問に、一色はゆっくりと言葉を吐き出す。
「松下優也は――殺される」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
有栖と奉日本『幸福のブラックキャット』
ぴえ
ミステリー
警察と相対する治安維持組織『ユースティティア』に所属する有栖。
彼女は謹慎中に先輩から猫探しの依頼を受ける。
そのことを表と裏社会に通じるカフェ&バーを経営する奉日本に相談するが、猫探しは想定外の展開に繋がって行く――
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第五話。
マザー・エレクトロン株式会社が開催する技術展示会『サイバーフェス』
会場は『ユースティティア』と警察が共同で護衛することになっていた。
その中で有栖達は天才・アース博士の護衛という特別任務を受けることになる。
活気と緊張が入り混じる三日間――不可解な事故と事件が発生してしまう。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第八話。
『過去』は消せない
だから、忘れるのか
だから、見て見ぬ振りをするのか
いや、だからこそ――
受け止めて『現在』へ
そして、進め『未来』へ
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『垂涎のハローワールド』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第七話。
全てはここから始まった――
『過去』と『現在』が交錯し、物語は『未来』へと繋がっていく。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『チープな刻の中で』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第四話。
誰しも時間は平等に流れている。
治安維持組織『ユースティティア』にも警察にも。
それが束の間の平穏だとしても。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
10日間の<死に戻り>
矢作九月
ミステリー
火事で死んだ中年男・田中が地獄で出逢ったのは、死神見習いの少女だった―…田中と少女は、それぞれの思惑を胸に、火事の10日前への〈死に戻り〉に挑む。人生に絶望し、未練を持たない男が、また「生きよう」と思えるまでの、10日間の物語。
変な屋敷 ~悪役令嬢を育てた部屋~
aihara
ミステリー
侯爵家の変わり者次女・ヴィッツ・ロードンは博物館で建築物史の学術研究院をしている。
ある日彼女のもとに、婚約者とともに王都でタウンハウスを探している妹・ヤマカ・ロードンが「この屋敷とてもいいんだけど、変な部屋があるの…」と相談を持ち掛けてきた。
とある作品リスペクトの謎解きストーリー。
本編9話(プロローグ含む)、閑話1話の全10話です。
有栖と奉日本『デスペラードをよろしく』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第十話。
『デスペラード』を手に入れたユースティティアは天使との対決に備えて策を考え、準備を整えていく。
一方で、天使もユースティティアを迎え撃ち、目的を果たそうとしていた。
平等に進む時間
確実に進む時間
そして、決戦のときが訪れる。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(X:@studio_lid)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる