有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』

奉日本-2

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　有栖が夜の張り込みを開始した夜、奉日本はバーの仕事に勤しんでいた。繁盛は喜ばしいことだが、彼一人で対応するが故に次から次へと業務をさばいていかなければならない。そんな慌ただしく働いていると時間は炎天下の中の氷のように溶けていく。
　――こんな様子だと、例の日まであっという間だな……関係ないけど。
　そう思い、スマホに表示される日付を見る。奉日本は既に裏社会で行われる大きな取引がいつ行われるのか情報を仕入れていた。
「十日後は……いつもどおり仕事かな」
　そんなことを呟いて、そんな未来のことよりも現在進行形でしなければならない仕事に従事する。
　今、この店に有栖の姿はない。仕事終わりに立ち寄ることもあるので、来たならば彼としては、もう少し聞きたいことがあった。
　――もしかしたら張り込みでもしてるかな
　そんなこと思いながら、奉日本は注文を受けているカクテルを作ることにした。