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有栖-2
有栖-2-4
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「お待たせしました、ポークソテーになります」
高本がそう言って、今日のランチを有栖に提供した。
大皿の上にはこんがりと焼き目のついた豚ロースが食べやすいように短冊に切られ、その上に鮮やかなパセリが散りばめられている。ポークソテーと一緒の皿には千切りのキャベツがあり、ライスとコンソメスープもセットでついてきた。
「いただきます」
有栖しかいない店内で、彼女はちゃんと感謝をしながら本日のランチを頂く。
ポークソテーは筋が切られており柔らかく、最初に醤油の風味を感じ、じゅわりと出てくる肉汁が口の中に広がると、自然とライスに手が伸びてしまう。
途中でキャベツで口の中をリセットしたり、コンソメスープに寄り道させたり、とランチとしては量は多めだが飽きることなく箸が進んだ。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「お粗末様でした。アイスコーヒー、出しますね」
「ありがとうございます」
高本は水出しコーヒーをグラスに注ぐ。
「午前中から外回りだったんですか?」
「えぇ、ちょっと仕事で……あ、情報収集が必要なんで協力して欲しいんですけど、いいですか?」
「俺が知っていることなら」
「コーポ松下って建物を知ってます?」
有栖の言葉を聞いた瞬間、高本の顔が一瞬だけ曇ったが、ちょうど彼女から見た彼の横顔は髪で隠れていたので気づかれることはなく、アイスコーヒーを持って向き合うときには、彼はいつも通りの笑顔を創っていた。
「建物の名前は聞いたことありますね。確か……」
高本が記憶の中を探すように思い出しながら話してくれた場所は、午前中に有栖が訪れた場所と一致した。
「知ってはいますが、場所ぐらいですね。何かあったんですか?」
「とある部屋に幽霊が出る、とか噂になってるみたいです。そのような話は聞いたことあります?」
「ありませんね。事故物件ってやつですか?」
「いや、そうではないんですけど。噂が出回って管理人が困ってるみたいで」
「噂が出回ってる、ですか……ユースは幽霊の相手もするんですね」
「警察が相手しなかったので」
一つ愚痴っぽく呟くと、ストローに口をつけてアイスコーヒーで喉を潤す。
「有栖さんは幽霊とか大丈夫なんですか?」
高本の質問は幽霊に対する恐怖や嫌悪についての質問だったが、
「あぁ、マズイかもしれません」
「おぉ、意外ですね」
「幽霊だと物理攻撃が通じないかもしれませんよね?」
検討違いの懸念を抱く有栖に対し、高本は可哀想な人を見るような眼差しを向けた。
高本がそう言って、今日のランチを有栖に提供した。
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「いただきます」
有栖しかいない店内で、彼女はちゃんと感謝をしながら本日のランチを頂く。
ポークソテーは筋が切られており柔らかく、最初に醤油の風味を感じ、じゅわりと出てくる肉汁が口の中に広がると、自然とライスに手が伸びてしまう。
途中でキャベツで口の中をリセットしたり、コンソメスープに寄り道させたり、とランチとしては量は多めだが飽きることなく箸が進んだ。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「お粗末様でした。アイスコーヒー、出しますね」
「ありがとうございます」
高本は水出しコーヒーをグラスに注ぐ。
「午前中から外回りだったんですか?」
「えぇ、ちょっと仕事で……あ、情報収集が必要なんで協力して欲しいんですけど、いいですか?」
「俺が知っていることなら」
「コーポ松下って建物を知ってます?」
有栖の言葉を聞いた瞬間、高本の顔が一瞬だけ曇ったが、ちょうど彼女から見た彼の横顔は髪で隠れていたので気づかれることはなく、アイスコーヒーを持って向き合うときには、彼はいつも通りの笑顔を創っていた。
「建物の名前は聞いたことありますね。確か……」
高本が記憶の中を探すように思い出しながら話してくれた場所は、午前中に有栖が訪れた場所と一致した。
「知ってはいますが、場所ぐらいですね。何かあったんですか?」
「とある部屋に幽霊が出る、とか噂になってるみたいです。そのような話は聞いたことあります?」
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「いや、そうではないんですけど。噂が出回って管理人が困ってるみたいで」
「噂が出回ってる、ですか……ユースは幽霊の相手もするんですね」
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一つ愚痴っぽく呟くと、ストローに口をつけてアイスコーヒーで喉を潤す。
「有栖さんは幽霊とか大丈夫なんですか?」
高本の質問は幽霊に対する恐怖や嫌悪についての質問だったが、
「あぁ、マズイかもしれません」
「おぉ、意外ですね」
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