有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』

ぴえ

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 有栖が案内されたのは階段で上って、最も奥にある――三階の角部屋だった。
「どうぞ」
 前を歩いていた松下がドアを開けてくれた。彼に続いて、有栖も入る。
「見回っても良いですか?」
「はい。見回るほどの広さではありませんが」
 玄関でそのような会話を交わすと有栖は靴を脱いで、中を確認する。
 室内の構成は1LDK。四畳の和室に八畳のスペースにはリビング、ダイニング、キッチンがまとめられている。床はフローリングで洋室のようだ。八畳のスペースは奥に行くに連れて、少し狭く、角が削られたような台形のようになっている。一番奥は窓があり、ベランダに繋がっていた。有栖には理解できないが、デザイナーズマンション、とかそのような類なのだろう。
「綺麗ですね」
「誰も住んでいませんから」
「ちなみに、事故物件とか……」
「それなら、まだ幽霊騒ぎにも納得できるのですが、本当に一度も誰かが住んでいた記録はないんです」
「賃貸の情報は出しているんですか?」
「イタズラ目的で住む人が来ても困るので今は出していませんが、父が管理していたときは出していたかと思います」
「なるほど」
 ベランダも確認したが、横の部屋とは緊急時に壊して移動できる仕切があるぐらいで、全てにおいて一般的で違和感はない。
「とりあえず、現時点では何も解りませんね。噂を作って面白がっている愉快犯の可能性もあるので、今日の夜も張り込んで確認してみます」
「ありがとうございます」
 有栖の提案に松下は頭を下げる。現時点では調査しても実りがないと判断した彼女は、午前中の捜査をひとまず終了した。
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