有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』

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　閉店後、片づけをしている奉日本はここ最近の状況を整理する。
「何かが起こる前触れか――」
　そう呟き、グラスを拭く。
　近々、とあるヤクザの組が大きな取引をすることは奉日本の耳にも入ってきていた。また、それに対応するのが警察なのか、ユースティティアなのか、それとも両者とも何も情報を得ていないのか、そこまでは知らないし、有栖との会話からも何かが解る様子もない。いや、実際は彼はそのことを真剣に探ろうとしたり、情報を得たりしようと考えていなかった。
「俺に何も得られることはないし、関わるにしてもリスクが高い」
　奉日本が聞いた限りでは大きな取引だ。そこに首を突っ込めば彼自身が目立つし、警察やユースティティアに疑われることになる。相応のリターンがあるなら、彼にも一考の価値があるがどう考えてもリスクが上回る。
「関わることはありませんね」
　拭いていたグラスを置くと、奉日本はその結論に納得して、片づけを続けた。