有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』

ぴえ

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 二十二時の店内は満席で賑わっていた。各々が酒を嗜み、自我を失うぐらいに酔って騒ぐようなこともなく、店の雰囲気を壊すことなく囁くような会話がシャボン玉のようにふよふよと漂い、消える。
「大学の課題がさぁ……」
「あのDJ捕まったんだ」
「詩島組の……」
「カラーズってさぁ――」
「今度遊びに行こうよ」
 と、この世界の表と裏の情報が混じり合うこの空間ではマスターの高本――いや、これは偽名だ。本名は奉日本(たかもと)である彼の耳には多くの情報が入ってくる。
 そんな奉日本が最近思うのは――
「最近、いつも以上にふわふわとしていますね」
 注文された酒を提供しながら、一人の男にそう言った。その相手は裏社会の知人だ。
「そりゃ、マスター。何か起こる前触れだろ」
「……そうですね」
 奉日本はその男の言葉に納得しながら、笑顔を返した。
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