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有栖-1

有栖-1-1

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「ここに残ったってことは、お前なりに考えた結果やろ?」
 白い、白い風景の中、声だけが聞こえた。
 聞き覚えのある声に、聞き覚えのある台詞。
「理不尽なんて、この先いくらでもあるぞ」
 真っ白な世界の中で、ぼんやりと人影が見える。顔は見えないが、誰が言ったのか、誰に言ったのか彼女は解った。何故ならこれは――実際にあった記憶の追体験だ。
 あぁ、夢か、と彼女は悟る。その瞬間から身体を動かしてみたり、視点を変えることを試みるが上手くいかない。仕方ないので、その人物の言葉に耳を澄ます。
「しゃあないな」
 呆れたような、疲れたような、聞き慣れた声。彼は彼女の方へと振り返る。
「ここに残って良かった、と一回ぐらいは思わせたるわ」



「……ん」
 少しだけ霞む視界に、見覚えのある風景が広がっている。枕の上から何度も見た自分の部屋は昨日と重ねても変化はない。間違い探しなら高難易度だ。
 部屋の主である有栖はゆっくりと身体を起こし、寝起きで思考が充分に回らない頭に手を当てて、無意識にボサボサの髪をわしゃわしゃとかき回した。
「何か……変な夢、見た気がする」
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