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有栖_5

有栖_5-3

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「今、考えれば、田中さんが現場を荒らしたのも怪しいんですよ」
 何も話さない田中に対して、有栖が話し続ける。
「現場に慣れていないとしても、警察としてありえないミスでした。だけど、あの行為が現場を荒らすことが目的だったとしたら辻褄が合う」
 あの日、田中は現場に土足で入り、靴底を血で汚し、その汚れを落とすためにシャワーも使った。それにより、後からあの場を調べだときに彼の痕跡が残っていたとしても違和感はなくなる。
「全ては現場にある自身の痕跡を上書きするのが目的だったのでは? あの日、田中さんのシャツが濡れていたのを覚えています。最初は汗だと思いましたが、現場でシャワーを使った可能性もある――返り血を流す為に」
 田中は何も言葉を返す様子はない。
「何故、荒らしたのか? 警察とユースティティアがブッキングする可能性がある為、互いに一報をいれることがあります。もしかしたら、そこで自分が近くまで来ている情報を聞いたのでは? 結果、予想以上に自分が近くにいたので貴方は慌てて痕跡を消す処理をすることになり、余裕を持って完全にできなかった。そして、不安になったから、ミスに乗じて痕跡を上書きする行為に出た」
「……有栖さん、憶測で話しすぎです。黙って聞いていたら、酷いじゃないですか」
 そこで初めて、田中が反論した。その表情は寂しそうで、辛そうでもある。
「だったら、身の潔白を証明する為に見せて欲しいものがあります。田中さんのスマホを――」
 有栖が更に一歩、田中に近づいた瞬間だった。
「うわぁぁぁ!」
 有栖の肩に激痛が走る。そこには流れるような動きで、田中が刺したナイフが突き立てられていた。
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