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神爪村の祟り

有栖-2

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「有栖さん、探偵でも始めたんですか?」
「なんか、以前にもそんなこと聞かれた記憶がありますけど違います」
 有栖の苦笑いを受け止めて、高本は悪戯に微笑んで会話を交わす。有栖もそのような返答がくるのを予想していたのか、溜め息一つ挟んで、会話の方向を修正する。
「その祟りの話をしても良いですか?」
「もちろん」
「何から話すかな。えっと――」
 そこから有栖は神爪村と彼女が担当している案件について話し始めた。

 神爪村は某県の山奥にある過疎化の進んだ田舎の村だ。数年前は携帯の電波も届きにくく、テレビを映すにも一苦労するような地域に存在している。
 ユースティティアに届いた依頼はその神爪村の調査だった。

「そこに以前住んでいた辻下さんっていうお爺さんがいるんですけど、その人の息子夫婦からの依頼なんです」
「以前、住んでいた、ということは今は住んでいないんですか?」
「はい。でも、戻りたいから調査をする必要があるんです」
「そこに祟りが関係するんですか?」
「そうです。辻下さんが出て行った理由にも、戻りたい理由にも関係しています」

 神爪村には昔から『祟り』が存在した。
 それは毎年、冬を迎えると村の人々が体調を崩し、中には心不全で死んでしまう……というものだった。その為、神爪村の人々は冬を迎える前に神社にお供え物をし、神様に祈りを捧げる風習がある。
 生まれも育ちも神爪村である辻下は同年代の一人が死んだことにより、その祟りを恐れ、息子夫婦が住む都会へと移住した。そこから十年ほど問題なく暮らしてきたが――

「そのお爺さん、残りの余生は生まれ育った神爪村で過ごしたいって言い始めたらしいんですよ」
「それで心配になった息子夫婦が、そのお爺さんが安全に暮らせるか神爪村の調査を依頼した、ということですか」
「ほとんど正解ですけど、ちょっと違います。正確には詳細な調査です」

 神爪村へは息子夫婦だけで事前に調査をしに行ったらしい。そこでは以前と変わらず、冬を迎える前には風習を行っているようだが、ここ最近は祟りで死んだ人はいないらしい。
 それは嬉しい情報ではあるのだが、祟りが完全になくなったのかは不明である。そこで、息子夫婦はユースティティアに詳細な調査を依頼したのだった。
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