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コーヒーブレイク

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「うっ」
「おう」
 その日、非番だった虹河原は近所を散策し、最近出来た喫茶店に入った。アイボリーの壁で建てられた直方体の建物は風化もなく、新しいがどこか親しみやすく入りやすい雰囲気だったが、入店した瞬間に彼は後悔した。
 カウンター席が五席、テーブル席が二人掛けは二つ、四人掛けが二つ。そこそこの広さだが店内は賑わっている――その二人掛けのテーブル席に一色が座っていたのだ。
 その席が出入口に近かった為、二人は互いに認識し合い、虹河原は軽く動揺し、一色は軽く挨拶をした。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「あぁ、はい。カウンター席で……」
 虹河原はそう言って店内を見て、言葉を詰まらせた。カウンター席は満席。テーブル席は四人掛けしか空いていない。
「いや、そこのテーブル席で」
「あ、はい。でも……」
 虹河原の対応をしていた若い女性店員が少し困った表情を見せていたので、何故かと思い彼は後ろを振り返る。そこには四人の家族連れが順番を待っていた。
「えっと……」
「そいつは、俺の知人なんで相席でお願いします」
 困っている虹河原と店員に近づき、一色がそう言った。
「なっ! 私は――」
「本当ですか? 助かります!」
 店員が安堵の笑顔を溢すと、虹河原はさすがにその先の言葉を続けることができなかった。
「ほら、困らせんな」
「……私の方が困ってますよ」
 一色に腕の引っ張られた虹河原は小さく、そう呟いた。
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