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プライド

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「やっぱり、ここのランチは格別ですねー」
 とある日の昼過ぎ、有栖は奉日本のカフェにランチを食べに来ていた。
「ありがとうございます」
 有栖の目の前にあるシーフードドリアとサラダが完食されているのを見て、奉日本は皿を下げ、食後のコーヒーを準備し始めた。以前から思ってはいたが彼女の食べっぷりは気持ちのいいもので、サラダはともかくドリアに関しては皿が熱く、くっついて食べにくいにも関わらず、残っているのは皿を舐めない限りはとれないだろうホワイトソースだけだ。作る側の奉日本も、この結果を見ると自然と上機嫌になる。
「この前、別のカフェでランチを食べたんですけど味がイマイチで高本さんのカフェが恋しくなりましたよ」
 そういえばこの以前、
「明日から一週間ほど来れないんです」
 と、いつかのランチを食べ終えたときに言われたことを奉日本は思い出す。ハンドミルで本日の豆を挽き終えると、上機嫌で冷蔵庫の中にあるサービスの手作りプリンを出そう、と準備を始めた。
 そのときだ。
「あー、でも、別の店で食べたキッシュは美味しかったなー」
 有栖の不用意な発言が、奉日本のプリンを取り出した手を止めた。
「キッシュですか?」
「そうです、そうです。初めて食べたんですけど、美味しかったんですよ。どっかの国の料理らしいんですけど」
「フランスあたりの郷土料理だった気がしますね」
「そうなんですねー。それしかなかったから食べましたけど、美味しかったんですよー。あれ? 高本さん、そのプリンは?」
 尋ねられた奉日本は先程まで見せていた笑顔の表面は同じまま、質だけを変えて答えた。
「俺のオヤツですけど、何か?」
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