有栖と奉日本『チープな刻の中で』

上司と部下

※

「給料ですか」
「初任給やな、使い道は決めとるんか？　施設への寄付はほどほどにしときや」
「は、はい。その件もありがとうございました」
　反保は過去に預けられていた養護施設にバイト代などを寄付してきた。それは経営難の施設を存続させる為だったが、運営者や職員も費用の着服などを横行し、腐りきった人間達が私利私欲で食い潰し、残すは建物の売却となるのはもう少しだった。
　しかし、反保がユースティティアに所属した際に心配事がなく、業務に従事できるように一色が組織に色々と手配をしてくれたらしい。
　結果的にこれまでの運営者は逮捕。施設としては今後も必要だろう、と判断され、職員も全て入れ替えて、現在は正しき施設として立て直しつつある。
「寄付はほどほどにします。買いたいものがあるので」
　反保はそう言って、照れたように小さく笑った。