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上司と部下

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「その目でも自身の動きに反映するとなると難しいんやな」
 ベンチに座ると一色は反保の目を覗き込むようにして話す。
「映像は頭に浮かんでいるんですけど、実際に動くとなると上手くいきません」
 反保の頭の中には彼が目で捉えた有栖や一色の動きが記憶されている。しかし、それを模倣したくても、細かい重心の移動やタイミングまでは上手くできない。こればかりは練習しかないようだ。
「有栖先輩ぐらい強くなれれば現場でも役に立てると思うんですけど……」
 指導の点は置いといて、有栖の体術が優れているのは一目瞭然だった。周囲で訓練している隊員と比べてもだ。
「強いってのは……フィジカル面か? それともメンタル面か?」
「え? 両方強そうにみえますけど」
「そうか? 前者は一流やな。ユースティティアでも有栖の戦闘能力はトップクラスや。後者は――今、必死で強くなろうとしてるってとこやな。まぁ、上司の視点やけど」
「はぁ……僕にはまだ解らないです」
 一色の言葉を疑うつもりはなかった。それはこれまでの訓練で、彼もまた有栖に負けていないほどの体術を取得していること。業務や戦闘術を解りやすく教えてくれること。他の隊員からも敬われていること。色んな要因が、彼が優秀だと反保に教えてくれたからだ。
 有栖には有栖の未熟な点があるのだろう、と反保は解らないながらも納得することにした。自身が強くなれば、解らないことも解るだろう、と信じて。
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