有栖と奉日本『翔べないツバサ』

第七章：Catch22

飛田_7-1

「飛田さん、納得が……」
「しつこいぞ、石橋。ん？」

　控え室を出て、廊下を歩く中、石橋をめんどくさそうに対応する飛田はポケットの中に違和感を覚えた。

「どうしました？」
「電話だ」

　違和感の正体である振動しているスマホを取り出し、着信画面を見る。

「石橋。ちょっと電話に出るから、先に撤収を進めといてくれ」
「は、はい。解りました」

　石橋が小走りで去って行くのを見ながら、声が届かなくなるところまで遠くなると飛田は着信に出た。

「はい、もしもし」
『飛田くん、お疲れ様です』
「お疲れ様です、天使さん」
『対応していた興業が終わったと聞いて。どうでしたか？』
「無事終了しました。ご命令通り、ユースティティアの任務が上手くいくように、気づかれないように協力もしてきました」
『そうですか。ありがとうございます。これでユースティティアは順調に、こちらの思惑通りに動いてくれるでしょう』
「他にも俺で出来ることなら何でも言ってください」
『次は本格的にユースティティアを潰すことになるでしょう。勿論、キミにも協力してもらいます。溜まりに溜まったキミの思いを存分に晴らしてください』
「ありがとうございます。では、本日は残務処理をして撤収します」

　飛田は天使からの回答を聞くと、スマホを切った。そして、ユースティティアがいた控え室を振り返る。

「またどこかで会う――か。思ったよりも早そうだ」

　飛田はそう呟くと、背を向けて歩き出した。