114 / 116
第十章_空白と余白
有栖_10-8
しおりを挟む
「ということで、まずは出来ることを探す為に、情報を展開するわ。みんなも知っている情報があれば教えて。もちろん、佐倉さんも」
京の言葉に有栖と反保、そこにまだ残ってくれている佐倉も頷いた。
「まずはデータの改ざん『レシエントメンテ』について」
そこから京は一色誠と真木が調べていた『レシエントメンテ』の情報を全員に話した。
当然、驚きはしたが、それでも現状のデータ改ざん能力を見れば納得せざる得ない。
「実質、証拠は変更し放題だし、改ざんするために証拠を作ることもできるってことですよね? 思っていた以上に、治安の崩壊も待ったなしって感じですね」
有栖は苦笑いでそう言った。
「でも『対抗策』もあるらしいの。それも調べていたみたい……見つかってないようだけど」
京の発言は唯一の希望だった。
「あるとしたら警察ですかね……でも、今、警察に対して探るのは即アウトですよ。できるだけ水面下で動かないと」
「反保の言う通りだ。そこは注意する点でもある」
佐倉が難しそうな表情で言葉を添えた。
「今回の件、中心で動いていたのはあの天使という男だろう。ここに直接来て、方針を話したぐらいだからな。そうなると、『レシエントメンテ』については、アイツが関わっている……そうなると我孫子が使えるか?」
「我孫子?」
その言葉に有栖が不快な表情を浮かべたが、佐倉は気づかない振りをして続けた。
「警察の内通者として我孫子をずっと怪しんでマークしていたんだ。天使とも知り合いのようだったしな。だが……」
「どうしました?」
「今回のデータ改ざんの際に我孫子が内通者として疑い、集めていた証拠類も消されているんだ。警察には秘密裏に動いていたから、言及もできてはいない」
「ですが、めちゃくちゃ怪しいですね」
「そうだ、怪しいんだ。その怪しさに拍車をかけることがある。過去にも警察への内通者は数人いたと思われる。だが、それらは不自然なタイミングで死亡し、新たな内通者が設けられてきた。いわゆるリレーのような方式だ。その周期は三年。しかし、我孫子だけは妙に長く既に五年以上は内通者として存在している。だから、証拠も多く集まってきていたんだが……」
「妙ですね。我孫子さんは戦闘能力が異常に高いわけじゃない。これまで同様に消せないわけがない――つまり、『消したくても消せない』ということですか?」
反保は自身の推理を述べる。それに佐倉も頷いた。
「我孫子、という人物は警察に死なれたら困る『何か』を持っている。『レシエントメンテ』の構想があったならば、例え殺害してもその死すら改ざんすることも、消すことも出来るはず。それなら、尚更問題はないはずなのに実行しない。つまり、その『何か』は『レシエントメンテ』に関すること――そう考えるのが自然ですね」
京が理路整然と考え、言葉を発する。皆の方向性は同じ方向を向いていた。
「我孫子から『レシエントメンテ』の対抗策に関する情報を見つける。そして、警察のデータ改ざんの能力を無効化か明るみ出来れば、目的は達成とも言える。だが――」
「どうかしましたか?」
ポジティブな方向へと思考がまとまりそうだったが、佐倉が言葉を濁す。
「現時点では我孫子は怪しい、というだけで、勾留することはできない。正式な理由で捕まえておかないと逃げられる。何か犯罪まがいのことをしてくれていれば良いんだが……」
その言葉を聞き、真っ先に動いたのは有栖だった。彼女は自分のデスクへと駆け込むとパソコンでユースティティアのデータベースへとアクセスした。
京の言葉に有栖と反保、そこにまだ残ってくれている佐倉も頷いた。
「まずはデータの改ざん『レシエントメンテ』について」
そこから京は一色誠と真木が調べていた『レシエントメンテ』の情報を全員に話した。
当然、驚きはしたが、それでも現状のデータ改ざん能力を見れば納得せざる得ない。
「実質、証拠は変更し放題だし、改ざんするために証拠を作ることもできるってことですよね? 思っていた以上に、治安の崩壊も待ったなしって感じですね」
有栖は苦笑いでそう言った。
「でも『対抗策』もあるらしいの。それも調べていたみたい……見つかってないようだけど」
京の発言は唯一の希望だった。
「あるとしたら警察ですかね……でも、今、警察に対して探るのは即アウトですよ。できるだけ水面下で動かないと」
「反保の言う通りだ。そこは注意する点でもある」
佐倉が難しそうな表情で言葉を添えた。
「今回の件、中心で動いていたのはあの天使という男だろう。ここに直接来て、方針を話したぐらいだからな。そうなると、『レシエントメンテ』については、アイツが関わっている……そうなると我孫子が使えるか?」
「我孫子?」
その言葉に有栖が不快な表情を浮かべたが、佐倉は気づかない振りをして続けた。
「警察の内通者として我孫子をずっと怪しんでマークしていたんだ。天使とも知り合いのようだったしな。だが……」
「どうしました?」
「今回のデータ改ざんの際に我孫子が内通者として疑い、集めていた証拠類も消されているんだ。警察には秘密裏に動いていたから、言及もできてはいない」
「ですが、めちゃくちゃ怪しいですね」
「そうだ、怪しいんだ。その怪しさに拍車をかけることがある。過去にも警察への内通者は数人いたと思われる。だが、それらは不自然なタイミングで死亡し、新たな内通者が設けられてきた。いわゆるリレーのような方式だ。その周期は三年。しかし、我孫子だけは妙に長く既に五年以上は内通者として存在している。だから、証拠も多く集まってきていたんだが……」
「妙ですね。我孫子さんは戦闘能力が異常に高いわけじゃない。これまで同様に消せないわけがない――つまり、『消したくても消せない』ということですか?」
反保は自身の推理を述べる。それに佐倉も頷いた。
「我孫子、という人物は警察に死なれたら困る『何か』を持っている。『レシエントメンテ』の構想があったならば、例え殺害してもその死すら改ざんすることも、消すことも出来るはず。それなら、尚更問題はないはずなのに実行しない。つまり、その『何か』は『レシエントメンテ』に関すること――そう考えるのが自然ですね」
京が理路整然と考え、言葉を発する。皆の方向性は同じ方向を向いていた。
「我孫子から『レシエントメンテ』の対抗策に関する情報を見つける。そして、警察のデータ改ざんの能力を無効化か明るみ出来れば、目的は達成とも言える。だが――」
「どうかしましたか?」
ポジティブな方向へと思考がまとまりそうだったが、佐倉が言葉を濁す。
「現時点では我孫子は怪しい、というだけで、勾留することはできない。正式な理由で捕まえておかないと逃げられる。何か犯罪まがいのことをしてくれていれば良いんだが……」
その言葉を聞き、真っ先に動いたのは有栖だった。彼女は自分のデスクへと駆け込むとパソコンでユースティティアのデータベースへとアクセスした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第五話。
マザー・エレクトロン株式会社が開催する技術展示会『サイバーフェス』
会場は『ユースティティア』と警察が共同で護衛することになっていた。
その中で有栖達は天才・アース博士の護衛という特別任務を受けることになる。
活気と緊張が入り混じる三日間――不可解な事故と事件が発生してしまう。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第二話。
少しずつではあるが結果を残し、市民からの信頼を得ていく治安維持組織『ユースティティア』。
『ユースティティア』の所属する有栖は大きな任務を目前に一つの別案件を受け取るが――
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
警狼ゲーム
如月いさみ
ミステリー
東大路将はIT業界に憧れながらも警察官の道へ入ることになり、警察学校へいくことになった。しかし、現在の警察はある組織からの人間に密かに浸食されており、その歯止めとして警察学校でその組織からの人間を更迭するために人狼ゲームを通してその人物を炙り出す計画が持ち上がっており、その実行に巻き込まれる。
警察と組織からの狼とが繰り広げる人狼ゲーム。それに翻弄されながら東大路将は狼を見抜くが……。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる