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第十章_空白と余白

有栖_10-1

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『一色 誠が確保された』

 昼頃に流れたその情報を聞いて、早朝から捜査をしていた有栖と反保はユースティティアへと戻った。
 昨日は深夜まで探したが見つけることが出来ず、少しの仮眠をとったあとに捜査を再開したものの既に何度も同じ場所の捜査になりそうだったので、捜索範囲を広げて、変更しようか、と悩んでいたときに飛び込んできた一報だった。

 ユースティティアに駆け込んだ有栖と反保は一報をくれた佐倉が
『戻ったら、医務室へ来てくれ』
と、話していたので、そこに向かって走った。
 場所が場所だけに大きな負傷をしているのかもしれない、とそんな漠然とした不安は二人の胸の中にあった。しかし、一方で、

「ドジッたわ」

 と、あっけらかんと笑う一色の様子も容易に想像でき、昨日までの捜索が徒労に終わることを願っていた。

 しかし、待っていた現実は二人が想像もしていなかったものだった。

 医務室にいたのは、ユースティティアの佐倉と警察の天使。そして、医務室のベッドの上には黒い遺体収納袋が置かれていた。
 その黒い袋には明らかに人が入っており、有栖と反保に『最悪の事態』を想像させるのは当然だった。
 それを否定して欲しい有栖は佐倉の顔を見た。しかし、彼の反応は『最悪の事態』を肯定するように、悲痛な表情で首を横に振った。
 その場にいる誰もが言葉を発することはなく、有栖がその袋に近づき、中央にあるチャックを少し降ろす。そこには額に穴が空き、死体となった一色が顔を覗かせた。
 有栖の身体は自然と震え、横から覗き込んだ反保はそれを確認すると絶望に力を奪われて、その場に崩れ落ちた。
「検死への手続きを行う前に、お前達は会っておくべきだと思ったんだ」
 作られた冷静な声で佐倉は二人に話しかける。そして、二人が茫然自失となっていることを確認すると、それ以上の声をかけることはなく、まだ考えて動くことができる唯一の大人として、内線を使用して検死の手続きを行った。
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