68 / 116
追憶_7
一色_三十九歳_1
しおりを挟む
「一色さん!!」
その日、聖は怒りの感情を露わにして、俺を会議室に呼び出して、前に立ち塞がったな。それを見て、俺は――あぁ、バレたな、と思った。それでも長い間、出し抜いた方かもしれんな。
「ユースティティアに転職する、というのは本当ですか?」
聖は俺を睨みながら、真っ直ぐに、そして、不安そうに聞いてきた。否定して欲しいんやろなぁ。頭も良くて、身体能力も高い、それに最近では別の才能も芽吹いてきたってのに、こういう解りやすいところがコイツの欠点やな。まぁ、そこが良いところなんかもしれんけど。
たぶん、俺の転職の情報も捜査一課の誰かが聖が何も知らんでおることに耐えかねて話したんやろ。俺は転職のことを聖以外には話して、黙ってて欲しいって伝えたから。
「……ホンマやで」
俺がそう言うたとき、聖は明らかに泣きそうな顔を一瞬見せて、俯いた。そんな顔するって思ったから言いたくなかってん。黙って消えようかと思ってん。あとから恨まれてるとか聞く方が楽やったから。
お前のことは可愛がってたし、自慢の相棒やから……自分が辛くならんように逃げるように去りたかってん。
その日、聖は怒りの感情を露わにして、俺を会議室に呼び出して、前に立ち塞がったな。それを見て、俺は――あぁ、バレたな、と思った。それでも長い間、出し抜いた方かもしれんな。
「ユースティティアに転職する、というのは本当ですか?」
聖は俺を睨みながら、真っ直ぐに、そして、不安そうに聞いてきた。否定して欲しいんやろなぁ。頭も良くて、身体能力も高い、それに最近では別の才能も芽吹いてきたってのに、こういう解りやすいところがコイツの欠点やな。まぁ、そこが良いところなんかもしれんけど。
たぶん、俺の転職の情報も捜査一課の誰かが聖が何も知らんでおることに耐えかねて話したんやろ。俺は転職のことを聖以外には話して、黙ってて欲しいって伝えたから。
「……ホンマやで」
俺がそう言うたとき、聖は明らかに泣きそうな顔を一瞬見せて、俯いた。そんな顔するって思ったから言いたくなかってん。黙って消えようかと思ってん。あとから恨まれてるとか聞く方が楽やったから。
お前のことは可愛がってたし、自慢の相棒やから……自分が辛くならんように逃げるように去りたかってん。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第五話。
マザー・エレクトロン株式会社が開催する技術展示会『サイバーフェス』
会場は『ユースティティア』と警察が共同で護衛することになっていた。
その中で有栖達は天才・アース博士の護衛という特別任務を受けることになる。
活気と緊張が入り混じる三日間――不可解な事故と事件が発生してしまう。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『幸福のブラックキャット』
ぴえ
ミステリー
警察と相対する治安維持組織『ユースティティア』に所属する有栖。
彼女は謹慎中に先輩から猫探しの依頼を受ける。
そのことを表と裏社会に通じるカフェ&バーを経営する奉日本に相談するが、猫探しは想定外の展開に繋がって行く――
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第二話。
少しずつではあるが結果を残し、市民からの信頼を得ていく治安維持組織『ユースティティア』。
『ユースティティア』の所属する有栖は大きな任務を目前に一つの別案件を受け取るが――
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『チープな刻の中で』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第四話。
誰しも時間は平等に流れている。
治安維持組織『ユースティティア』にも警察にも。
それが束の間の平穏だとしても。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第八話。
『過去』は消せない
だから、忘れるのか
だから、見て見ぬ振りをするのか
いや、だからこそ――
受け止めて『現在』へ
そして、進め『未来』へ
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
変な屋敷 ~悪役令嬢を育てた部屋~
aihara
ミステリー
侯爵家の変わり者次女・ヴィッツ・ロードンは博物館で建築物史の学術研究院をしている。
ある日彼女のもとに、婚約者とともに王都でタウンハウスを探している妹・ヤマカ・ロードンが「この屋敷とてもいいんだけど、変な部屋があるの…」と相談を持ち掛けてきた。
とある作品リスペクトの謎解きストーリー。
本編9話(プロローグ含む)、閑話1話の全10話です。
有栖と奉日本『デスペラードをよろしく』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第十話。
『デスペラード』を手に入れたユースティティアは天使との対決に備えて策を考え、準備を整えていく。
一方で、天使もユースティティアを迎え撃ち、目的を果たそうとしていた。
平等に進む時間
確実に進む時間
そして、決戦のときが訪れる。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(X:@studio_lid)
ダブルネーム
しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する!
四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる