有栖と奉日本『垂涎のハローワールド』

追憶_6

一色_三十三歳_3

　特別警察高校で聖と同時期を過ごした奴らから聞いた話では、首席やった聖はずっと孤独やったらしい。頭の回転が速く、身体能力も高い故に何でも出来た。誰よりも早く出来た。周囲と合わせたくても、あまりにも遅い。上手くいかない。
　けど、優秀やから問題無く卒業し、警察にも入署できた。

　まぁ、けど社会に出るとそれだけでねじ伏せるのは難しい。狡猾な奴もおれば、周囲に頼るのが上手くて実力以上の結果を出す奴もおる。
　そういった意味では、俺は聖の相棒としては最適やったな。聖の考えてることも解るし、上回る策も考えつくことが出来たし。当人は悔しかったやろうけど。

　とはいえ、聖が優秀なのは間違いなかった。この若さでそこまでの策や思考が考えつくのか、と感心したことも多くあった。足りないのは実戦を通じた経験。この世には色んな人がおること――信頼していい人間、そして、決して信じたらアカン人間。そこらを知って、上手く立ち回れるようになれば聖は確実に警察で希代の大物になれる。俺はそう思った。
　けど、一方で俺は聖に『何か足りない』と思う部分もあった。かつて、どこかで感じた――

　俺は聖を生意気な子供を教育するように、時には親のように、時には兄のように接した。その中で信頼関係は築かれていったんや。
　聖も優秀やから俺が自身より実力があることを解ってたんやろな。だから、俺の話を素直に聞くこともあったし、悔しさから俺を追い抜かす為に張り合うこともあったわ。

　けど、常に心地よい丁々発止ができて、互いに信頼できる相棒となった俺らは、五年間――最高の結果を残し続けた。