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第四章_五日前

一色_4-3

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 一色は詩島組が過去に栄えていたことを知っている。それこそ他の組も

「詩島組とは揉めるな」

 と、注意を払うぐらいに危険視されていた。

 それは、警察との関係が深かったからだ。

 詩島組は警察と頻繁に裏取引を行っており、互いに信頼は厚く、対等な関係だった。警察は詩島組のおかげで厄介な仕事の処理がし易かったし、詩島組も警察の後ろ盾により自由にシノギを行っていた。

 しかし、詩島組に不幸が訪れた。

 それは当時の組長が急死したことだ。
 この死んでしまった当時の組長は優秀だった。それこそ、部下達の信頼も厚く、威光も充分だった。切れ者、という表現がぴったりと当てはまる――そんな人物だった。
 一色もその人物を中心に詩島組の覇権は続くと思っていたほどだった。

 しかし、その組長が交通事故による急死した。
 その跡目を息子が継いだものの、彼はしっかりと教育を受けていなかった。ただ権力を欲しがった七光りだ。ヤクザの仕事も甘くみていたのだろう。それこそ親の心子知らずだった。

 従来ならば、何が大切で、何をしなければならないのか……その全てを学べず、引き継げなかった。周囲のサポートが甘かったのも問題だ。いや、それほどワンマンだった死んでしまった親に問題があったのかもしれない。彼もまだ死ぬつもりはなかったのだろうが。

「結局『あの場所』の重要さも理解していなかった。そして、色々と回収できなかった――不幸は続いて、それが警察にバレたってのも致命傷やったな。だから、彼等はアース博士の誘拐に賭けたけど、それも失敗。同情するわ」

 高く積んだ功績が積み木崩しのように、思い描いて絵は失敗したドミノ倒しのように、全てがぐちゃぐちゃになってしまった。

「『あの場所』――コーポ松下も調べとくか」

 一色はそう言って、その場を立ち去った。
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