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第三章_六日前

一色_3-1

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『ようこそ、マザー・エレクトロン株式会社へ。お待ちしておりました、一色さま』
 ロビーで待ち構えていた見覚えのあるロボットは一色の姿を認識すると、そう言った。
「確か、アリスやっけか。久々やな、来訪の予約をしてたんやけど」
『承知しております。今から、担当の者を呼びますので少々お待ち下さい』
 そう言われて、一色は待っている間、近くにある椅子に腰掛けようかと思ったが、どうせすぐに来るだろうと思って、そのまま周囲を見渡した。

 広々とした真っ白なロビーには様々なところに大きなモニターが付けられており、新商品の紹介や最近の実績。消費電力量や環境保全活動について等、情報が次々に切り替わりながら映し出される。
 四方に自動ドアがあり、一色の後方にあるのは出入口だが、それ以外は別の棟に繋がっているのだろう。

 マザー・エレクトロン株式会社はロボティクス技術を含め、様々な最先端技術の研究・開発を行っている世界的に有名な企業だ。
 最近ではサイバーフェス、というイベントがあり一色達も警備任務を請け負ったことがある。

 そのときのことを思い出そうとしたら、自動ドアの一つが静かに開き、そこから白衣の男性が現れて、一色へと近づいて来た。

「お待たせして申し訳ございません、一色様。本日はサイバーフェス以降の我が社の状況についてヒアリング、ということですが間違いなかったでしょうか?」
「えぇ。『あの事件』は警察が基本対応しましたが、我々ユースティティアもちょっとは社員から話を聞いておかないと駄目でして」
「少し経過しましたが……こう言ってはなんですが、今更ですか?」
「ですよね。私もそう思います。私達も警察が対応したので忘れていたのですが、『警察のみ』という状況に気づいた上司に小言を言われまして」
 一色は事前に考えていた嘘の事情をさらさらと口から出して、笑う。
「あー、そういうことありますよ。では、応接室まで案内します」
「ありがとうございます」
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