有栖と奉日本『垂涎のハローワールド』

ぴえ

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第一章:八日前

一色_1-4

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「しかし、何故、警察の重役はそこまで天使を放置するかね?」
「天使は既に根回しをしてるはずや。その重役に甘い話を持って行ったんやろ」
 真木の問いに、一色は即答した。まるで自分ならそうする、と言わんばかりに彼は天使の行動を理解しているようだった。
 そして、一色は話を続ける。
「天使は戦闘能力も知能も警察ではトップクラスや。そんな人材が裏で精力的に動いてくれるなら重宝もされる」
「捨てるには惜しい、か。でも、同時に危険視もされるだろ」
「そうや。だから、普通は引き際を見極める。それを間違えたら消されるからな。せやけど、天使が選んだんは――更なる力を得ることや」
「それが『レシエントメンテ』か」

 その単語を出した瞬間に、軽快に交わされていた会話はまるで周囲の酸素が奪われたかのように続く言葉を封じさせた。
 そして、改めて慎重に、周囲を警戒するかのように、一色が口を開いた。

「『レシエントメンテ』について、何か情報は得られたか?」
「いや、何も。下手に動くと天使に気づかれそうだから、慎重――いや、正直ビビって上手く動けていない」
「それが正しいよ。俺もそんなもんや」
「イチ。天使は『レシエントメンテ』を既に手に入れているのか?」

 その問いに一色は一度目を瞑り、少し考えたあとに真っ直ぐに相手を見据えて答えた。

「想定より早いけど、おそらくな。
 まだ試運転の段階かもしれんけど、『レシエントメンテ』を手に入れて、管理方法を整備して自分にしか扱えないようにすれば、警察の重役達は天使を消すより、利用もしくは協力関係、なんやったら天使の下についても良いと思えるぐらいに魅力を感じるはずや」
「おそろしい話だ。
 イチから聞いた限りでは『レシエントメンテ』の力は強力過ぎる――あれは警察もユースの存在意義も正義も、その意味を失わしてしまう」
「あぁ、だからその存在を知っている俺は――いや、『俺やからこそ』見過ごすことは出来んのや」
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