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第一章:八日前
一色_1-2
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真木 辰斗(まき たつと)――彼は元は警察に勤めていた一色の同僚だ。
警察に勤務していたときは派出所を統括する立場まで出世したが、以前、派出所に勤務する警察官が殺人事件を起こす――反保がユースティティアに所属することになった事件の責任をとって辞職した。
その後は『別の職業』に転職したのだが……
「おう、イチ。待たせたな」
「いや、構わんよ」
真木は一色の向かいに座ると、水を運んできたウェイトレスに、
「コーヒーとオムライス」
「あ、じゃあ、俺もコーヒーおかわりで」
彼はメニューも見ずにランチを頼み、一色もそれに便乗するようにコーヒーの追加を頼んだ。オムライスは表のショーウィンドウに食品サンプルが飾ってあったので、それを見て注文したのだろう。
「悪い、昼飯まだなんだわ」
時刻は十四時過ぎ。ランチにしては遅めだ。
「忙しいのか? 『私立探偵』は」
「ぼちぼちだな。というか、今忙しいのはお前からの案件のせいだ」
真木が退職したあと、一色は連絡をとり今後の話をしたことがあった。
真木は警察にいたときから人柄も良く、懇意にしていた人々も多く、人脈も広い。それを活かした職業として探偵でもしようか、と考えていると一色に相談し、彼も賛同した。
そして、実際に私立探偵としてスタートした真木に、一色は『とある依頼』をしていたのだった。
「調子はどうだ? アポロ」
「俺がアポロだったら、イチはヘイスティングか?」
そう言って二人は笑うが、水を一口飲んだ真木は一つ呼吸を挟むと、首を横に振って続けた。
「いや、違うな。俺はポアロみたいに優秀じゃないし、お前はヘイスティングよりももっと主役の立ち位置にいるべきだ」
「脇役でええよ。平穏に終わるなら――で、どうだ?」
「調べてるよ、色々と。でも、調べても調べても解るのは……天使のヤバさだ」
警察に勤務していたときは派出所を統括する立場まで出世したが、以前、派出所に勤務する警察官が殺人事件を起こす――反保がユースティティアに所属することになった事件の責任をとって辞職した。
その後は『別の職業』に転職したのだが……
「おう、イチ。待たせたな」
「いや、構わんよ」
真木は一色の向かいに座ると、水を運んできたウェイトレスに、
「コーヒーとオムライス」
「あ、じゃあ、俺もコーヒーおかわりで」
彼はメニューも見ずにランチを頼み、一色もそれに便乗するようにコーヒーの追加を頼んだ。オムライスは表のショーウィンドウに食品サンプルが飾ってあったので、それを見て注文したのだろう。
「悪い、昼飯まだなんだわ」
時刻は十四時過ぎ。ランチにしては遅めだ。
「忙しいのか? 『私立探偵』は」
「ぼちぼちだな。というか、今忙しいのはお前からの案件のせいだ」
真木が退職したあと、一色は連絡をとり今後の話をしたことがあった。
真木は警察にいたときから人柄も良く、懇意にしていた人々も多く、人脈も広い。それを活かした職業として探偵でもしようか、と考えていると一色に相談し、彼も賛同した。
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「いや、違うな。俺はポアロみたいに優秀じゃないし、お前はヘイスティングよりももっと主役の立ち位置にいるべきだ」
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