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第一章:決戦の足音
飛田_1-2
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「では、何故……」
肯定されたからには、その方法を選ばないことに対して疑問が浮かぶ。
「希少な人種ですが、何度叩き潰しても逆らってくる諦めの悪い人種もいるのですよ」
「諦めの悪い人種?」
「えぇ、そのような奴等は様々な言葉で表現できます。根性がある、精神力が強い、馬鹿――とかね」
天使はくすくすと笑う。一方で飛田は困惑した表情を浮かべたままだった。
「そのような奴等が諦めないのは何故か――抜け道があるからです」
「抜け道?」
「えぇ、こうすれば勝てた、負けたのは何かしらの原因がある――まぁ、言い訳と表すこともできますが、諦めの悪い人種はそこに逃げて諦めることを選ばない。むしろ逆です。それさえ対策ができれば、もっと自身が頑張れば、と何かしらの改善点や光明を見いだしてはまた立ち上がる。屈しない。どうです? ユースにそのような人物がいませんか?」
そう問われ、飛田の頭には有栖の姿が浮かび、次に反保が浮かんだ。
「そもそも『レシエントメンテ』のことを知り、その効力を目の当たりにすればたいていの人は諦めますよ。でも、現時点でユースの一部は諦めていない。こういう組織は徹底的に潰しておかないと万が一でも足下をすくわれるかもしれない。私はそのようなリスクは除去しておきたいのです」
天使の目はもう笑っていない。そこには油断はなく、獅子が兎を狩るときの目だった。
「ユースの連中は『レシエントメンテ』を卑怯な手段だと考えているかもしれません。そうならば、自分達は正々堂々挑んだから負けたんだ、と言い訳が出来て、また挑んでくる。だから、更に先回りをします。ユースは今回、裏社会の組織である高良組と協力し、ワクチンを手に入れた。これは、通常ならば許されない方法です。つまり、相手も卑怯な手段を使い、私達に挑んできた。なりふり構わず、同じ土俵に立って、挑んできたのです。その上で潰せば、さすがに絶望に沈み、もう浮上することはないでしょう」
天使が望むのは完全勝利。そして、そのシナリオは既に完成していた。事実、ユースティティアの特務課は実際、自分たちの力でワクチンを手に入れたつもりでいる。それですら、天使のシナリオの一部だと知らずに。そして、普段なら協力することはない裏社会とも繋がった。
「卑怯な手段に対して、卑怯な手段を使って挑んで負けた――そうなれば、さすがに諦めるしかない、ということですか」
飛田は天使の考えていることを理解し、寒気を感じながら要約した。
「そうです」
「もしそれでも諦めなかったら?」
「それは是非見てみたいものですね。期待しておきましょう」
そう言った天使は今回負けることなど微塵も考えておらず、また、その先はないことも解っているようだった。
肯定されたからには、その方法を選ばないことに対して疑問が浮かぶ。
「希少な人種ですが、何度叩き潰しても逆らってくる諦めの悪い人種もいるのですよ」
「諦めの悪い人種?」
「えぇ、そのような奴等は様々な言葉で表現できます。根性がある、精神力が強い、馬鹿――とかね」
天使はくすくすと笑う。一方で飛田は困惑した表情を浮かべたままだった。
「そのような奴等が諦めないのは何故か――抜け道があるからです」
「抜け道?」
「えぇ、こうすれば勝てた、負けたのは何かしらの原因がある――まぁ、言い訳と表すこともできますが、諦めの悪い人種はそこに逃げて諦めることを選ばない。むしろ逆です。それさえ対策ができれば、もっと自身が頑張れば、と何かしらの改善点や光明を見いだしてはまた立ち上がる。屈しない。どうです? ユースにそのような人物がいませんか?」
そう問われ、飛田の頭には有栖の姿が浮かび、次に反保が浮かんだ。
「そもそも『レシエントメンテ』のことを知り、その効力を目の当たりにすればたいていの人は諦めますよ。でも、現時点でユースの一部は諦めていない。こういう組織は徹底的に潰しておかないと万が一でも足下をすくわれるかもしれない。私はそのようなリスクは除去しておきたいのです」
天使の目はもう笑っていない。そこには油断はなく、獅子が兎を狩るときの目だった。
「ユースの連中は『レシエントメンテ』を卑怯な手段だと考えているかもしれません。そうならば、自分達は正々堂々挑んだから負けたんだ、と言い訳が出来て、また挑んでくる。だから、更に先回りをします。ユースは今回、裏社会の組織である高良組と協力し、ワクチンを手に入れた。これは、通常ならば許されない方法です。つまり、相手も卑怯な手段を使い、私達に挑んできた。なりふり構わず、同じ土俵に立って、挑んできたのです。その上で潰せば、さすがに絶望に沈み、もう浮上することはないでしょう」
天使が望むのは完全勝利。そして、そのシナリオは既に完成していた。事実、ユースティティアの特務課は実際、自分たちの力でワクチンを手に入れたつもりでいる。それですら、天使のシナリオの一部だと知らずに。そして、普段なら協力することはない裏社会とも繋がった。
「卑怯な手段に対して、卑怯な手段を使って挑んで負けた――そうなれば、さすがに諦めるしかない、ということですか」
飛田は天使の考えていることを理解し、寒気を感じながら要約した。
「そうです」
「もしそれでも諦めなかったら?」
「それは是非見てみたいものですね。期待しておきましょう」
そう言った天使は今回負けることなど微塵も考えておらず、また、その先はないことも解っているようだった。
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