有栖と奉日本『デスペラードをよろしく』

第一章：決戦の足音

飛田_1-1

「天使さん、一つ質問をしてもいいですか？」

　後ろで手を組んだまま飛田が天使に尋ねた。

「いいですよ。なんでしょう？」

　天使は微笑みながら彼の発言を許可し、促した。

「ユースを潰すにはこんな回りくどいやり方をしなくても、『レシエントメンテ』を使用すればどうとでもなったのでは？　例えば犯罪の証拠の捏造で逮捕。それこそ、情報を操作しておびき出せば『デスペラード』さえ奪い、クライアントの要望にも事前に応えられたと思います」

　飛田の話を聞きながら、天使は頷き、微笑む。飛田としては、こんなことは天使も考えており、この方法では無理な何かがあるのだと思っていた。ただその『何か』は解からない。返答に少々の侮蔑を覚悟していたが、

「そのとおりです」

　返ってきた言葉は肯定で、天使は微笑みを崩さなかった。