5 / 41
第一章 正常性バイアス
※
しおりを挟む
「ルイくん。このカッター、変だよ」
六月の終わりごろ。外は暑くて、湿気が多くてジメジメしている時期だったからバイト先の倉庫整理はクーラーも効いてて、客から面倒なことを言われることもないから楽だなぁ、とか思っていたら、バイト先の先輩のヒメコさんが入荷商品を数えている僕に話しかけてきた。
ヒメコさんこと青野姫子(あおのひめこ)さんは僕より年齢が二つ上の大学一年生。
モデルのような体型で髪型はお団子頭。そして、大きな目に青い縁のメガネが特徴的。気さくで優しくて、僕が密かに憧れている先輩だ。そんな先輩は困惑した表情で右手に握ったカッターナイフを見つめていた。
あの白いカッターナイフ。
ヒメコさんが倉庫にある商品の確認などで開梱作業をする際、忘れたと言ったから貸した僕の白いカッターナイフだ。
「変って何がですか?」
「あれがないのよ」
「あれ?」
「ほら、カッターの刃を折るやつ」
そう言って、僕はヒメコさんからカッターナイフを受け取る。
ホームセンターの業務はとにかくカッターをよく使う。だから、刃がボロボロになって切りにくくなることなんて、よくあることだ。僕はまだこのカッターで刃を折ることをしたことはなかったけど、時期的に切りにくくなる頃だったんだと思う。だから、ヒメコさんは刃を折ろうとしたんだ。
受け取ったカッターは、さっきまで使っていたからヒメコさんの人肌の温もりが持ち手部分に残っていた。まぁ、一瞬で消えたけど。いや、それはどうでもよくて、僕はカッターの刃が出る部分の反対側。刃を交換する際に取り外すキャップ部分を確認する。一般的なカッターはそこに刃を折る細い穴があるからだ。
「ない……ですね」
「でしょ?」
キャップ部分には刃を折る穴はなかった。塞がっていた。というか、このキャップ取れないし、何だコレ。
「不良品かな? 何処で買ったの?」
「あー、どこだったかなぁ」
いや本当に何処で買ったんだコレ? というか、本当に買ったのか?
六月の終わりごろ。外は暑くて、湿気が多くてジメジメしている時期だったからバイト先の倉庫整理はクーラーも効いてて、客から面倒なことを言われることもないから楽だなぁ、とか思っていたら、バイト先の先輩のヒメコさんが入荷商品を数えている僕に話しかけてきた。
ヒメコさんこと青野姫子(あおのひめこ)さんは僕より年齢が二つ上の大学一年生。
モデルのような体型で髪型はお団子頭。そして、大きな目に青い縁のメガネが特徴的。気さくで優しくて、僕が密かに憧れている先輩だ。そんな先輩は困惑した表情で右手に握ったカッターナイフを見つめていた。
あの白いカッターナイフ。
ヒメコさんが倉庫にある商品の確認などで開梱作業をする際、忘れたと言ったから貸した僕の白いカッターナイフだ。
「変って何がですか?」
「あれがないのよ」
「あれ?」
「ほら、カッターの刃を折るやつ」
そう言って、僕はヒメコさんからカッターナイフを受け取る。
ホームセンターの業務はとにかくカッターをよく使う。だから、刃がボロボロになって切りにくくなることなんて、よくあることだ。僕はまだこのカッターで刃を折ることをしたことはなかったけど、時期的に切りにくくなる頃だったんだと思う。だから、ヒメコさんは刃を折ろうとしたんだ。
受け取ったカッターは、さっきまで使っていたからヒメコさんの人肌の温もりが持ち手部分に残っていた。まぁ、一瞬で消えたけど。いや、それはどうでもよくて、僕はカッターの刃が出る部分の反対側。刃を交換する際に取り外すキャップ部分を確認する。一般的なカッターはそこに刃を折る細い穴があるからだ。
「ない……ですね」
「でしょ?」
キャップ部分には刃を折る穴はなかった。塞がっていた。というか、このキャップ取れないし、何だコレ。
「不良品かな? 何処で買ったの?」
「あー、どこだったかなぁ」
いや本当に何処で買ったんだコレ? というか、本当に買ったのか?
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
※毎日18時更新予定です。
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる