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「――えぇ、そうですよ」

 奉日本は有栖の問いに嘘偽りなく答えた。ここで何かを隠すのは得策ではないと判断したのだろう。

「俺はよく伊東さんの店に手伝いで呼ばれていましたから」
「ありがとうございます。では、早速ですが、高本さんは伊東から何か聞いていませんか? 伊東はその日の落の行動について事前に調べていたはずですし、接触もしているはずなんです。ですが、彼から聞くのは不可能……そうなると、伊東がそのことについて高本さんに話してなかったか、それを聞きたいんです。例えば――何かのパスワードのようなこととか」
「伊東さんのこと。そして、パスワードのようなことですか。そうですね――」

 奉日本は過去を思い出す振りをするが、実際はそれはポーズだった。なぜなら、彼は伊東のことをよく覚えていたのだから。
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