83 / 104
現在_奉日本_2
奉日本_2
しおりを挟む
「高本さん、すみません。事前にお伝えした通り、本日はユースティティアとしての聴取になります。こちらで様々な捜査を行った結果、高本さんから話を聞くべきだと判断しました」
有栖の表情は真剣で真っ直ぐに奉日本を見ていた。
「どうぞ座ってください。俺はこのまま立っていても大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません」
有栖はカウンター席に座り、奉日本はカウンターを挟み向かいに立つ。逃げやすいのは彼のポジションだが、彼女なら即座に追いつき、確保するのは容易いので無駄なことは考えないようにした。
「では、早速ですが――落 源芽、という男を知っていますでしょうか?」
「……聞いたことがあるような、ないような、といったところでしょうか。お客様にそのような方がいたかもしれません」
「そうですか。実はこの男、素性が不明なんですよ。結婚していたそうなんですが、奥さんも子供の情報も不明でして。彼のデータベースに関しては多くの情報が消されています。まぁ、これはこっちが別で調べている『とあること』に関わった人物だから、ということで納得はしているのですが」
「……そうなんですか。どうして、その男について知りたいんですか?」
「この男しか知らない情報があるからです」
「それで、その男を捜している、と」
「いえ、この男は既に死んでいます。だから、正確にいえば、この男に関わった人物が何か聞いていないか――それが知りたいんです」
「……なるほど。それでその男がこの店に来ていた情報でも聞きましたか?」
「いえ、そんなことはありません」
「では、何故、俺に聴取を?」
「二つの可能姓から……まぁ、一つは関係ないと思っていますが。とりあえず、可能姓の高い方から話しますと――非常に間接的ではありますが、この男が死んだことに高本さんが関わっていて、何かの情報を聞いているかもしれないからです」
有栖の表情は真剣で真っ直ぐに奉日本を見ていた。
「どうぞ座ってください。俺はこのまま立っていても大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません」
有栖はカウンター席に座り、奉日本はカウンターを挟み向かいに立つ。逃げやすいのは彼のポジションだが、彼女なら即座に追いつき、確保するのは容易いので無駄なことは考えないようにした。
「では、早速ですが――落 源芽、という男を知っていますでしょうか?」
「……聞いたことがあるような、ないような、といったところでしょうか。お客様にそのような方がいたかもしれません」
「そうですか。実はこの男、素性が不明なんですよ。結婚していたそうなんですが、奥さんも子供の情報も不明でして。彼のデータベースに関しては多くの情報が消されています。まぁ、これはこっちが別で調べている『とあること』に関わった人物だから、ということで納得はしているのですが」
「……そうなんですか。どうして、その男について知りたいんですか?」
「この男しか知らない情報があるからです」
「それで、その男を捜している、と」
「いえ、この男は既に死んでいます。だから、正確にいえば、この男に関わった人物が何か聞いていないか――それが知りたいんです」
「……なるほど。それでその男がこの店に来ていた情報でも聞きましたか?」
「いえ、そんなことはありません」
「では、何故、俺に聴取を?」
「二つの可能姓から……まぁ、一つは関係ないと思っていますが。とりあえず、可能姓の高い方から話しますと――非常に間接的ではありますが、この男が死んだことに高本さんが関わっていて、何かの情報を聞いているかもしれないからです」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【か】【き】【つ】【ば】【た】
ふるは ゆう
ミステリー
姉の結婚式のために帰郷したアオイは久しぶりに地元の友人たちと顔を合わせた。仲間たちのそれぞれの苦痛と現実に向き合ううちに思いがけない真実が浮かび上がってくる。恋愛ミステリー
有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第二話。
少しずつではあるが結果を残し、市民からの信頼を得ていく治安維持組織『ユースティティア』。
『ユースティティア』の所属する有栖は大きな任務を目前に一つの別案件を受け取るが――
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第五話。
マザー・エレクトロン株式会社が開催する技術展示会『サイバーフェス』
会場は『ユースティティア』と警察が共同で護衛することになっていた。
その中で有栖達は天才・アース博士の護衛という特別任務を受けることになる。
活気と緊張が入り混じる三日間――不可解な事故と事件が発生してしまう。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『幸福のブラックキャット』
ぴえ
ミステリー
警察と相対する治安維持組織『ユースティティア』に所属する有栖。
彼女は謹慎中に先輩から猫探しの依頼を受ける。
そのことを表と裏社会に通じるカフェ&バーを経営する奉日本に相談するが、猫探しは想定外の展開に繋がって行く――
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『チープな刻の中で』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第四話。
誰しも時間は平等に流れている。
治安維持組織『ユースティティア』にも警察にも。
それが束の間の平穏だとしても。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
マクデブルクの半球
ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。
高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。
電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう───
「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」
自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。
さよならクッキー、もういない
二ノ宮明季
ミステリー
刑事の青年、阿部が出会った事件。そこには必ず鳥の姿があった。
人間のパーツが一つずつ見つかる事件の真相は――。
1話ずつの文字数は少な目。全14話ですが、総文字数は短編程度となります。
月夜のさや
蓮恭
ミステリー
いじめられっ子で喘息持ちの妹の療養の為、父の実家がある田舎へと引っ越した主人公「天野桐人(あまのきりと)」。
夏休み前に引っ越してきた桐人は、ある夜父親と喧嘩をして家出をする。向かう先は近くにある祖母の家。
近道をしようと林の中を通った際に転んでしまった桐人を助けてくれたのは、髪の長い綺麗な顔をした女の子だった。
夏休み中、何度もその女の子に会う為に夜になると林を見張る桐人は、一度だけ女の子と話す機会が持てたのだった。話してみればお互いが孤独な子どもなのだと分かり、親近感を持った桐人は女の子に名前を尋ねた。
彼女の名前は「さや」。
夏休み明けに早速転校生として村の学校で紹介された桐人。さやをクラスで見つけて話しかけるが、桐人に対してまるで初対面のように接する。
さやには『さや』と『紗陽』二つの人格があるのだと気づく桐人。日によって性格も、桐人に対する態度も全く変わるのだった。
その後に起こる事件と、村のおかしな神事……。
さやと紗陽、二人の秘密とは……?
※ こちらは【イヤミス】ジャンルの要素があります。どんでん返し好きな方へ。
「小説家になろう」にも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる