有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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「高本さん、すみません。事前にお伝えした通り、本日はユースティティアとしての聴取になります。こちらで様々な捜査を行った結果、高本さんから話を聞くべきだと判断しました」

 有栖の表情は真剣で真っ直ぐに奉日本を見ていた。

「どうぞ座ってください。俺はこのまま立っていても大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません」

 有栖はカウンター席に座り、奉日本はカウンターを挟み向かいに立つ。逃げやすいのは彼のポジションだが、彼女なら即座に追いつき、確保するのは容易いので無駄なことは考えないようにした。

「では、早速ですが――落 源芽、という男を知っていますでしょうか?」
「……聞いたことがあるような、ないような、といったところでしょうか。お客様にそのような方がいたかもしれません」
「そうですか。実はこの男、素性が不明なんですよ。結婚していたそうなんですが、奥さんも子供の情報も不明でして。彼のデータベースに関しては多くの情報が消されています。まぁ、これはこっちが別で調べている『とあること』に関わった人物だから、ということで納得はしているのですが」
「……そうなんですか。どうして、その男について知りたいんですか?」
「この男しか知らない情報があるからです」
「それで、その男を捜している、と」
「いえ、この男は既に死んでいます。だから、正確にいえば、この男に関わった人物が何か聞いていないか――それが知りたいんです」
「……なるほど。それでその男がこの店に来ていた情報でも聞きましたか?」
「いえ、そんなことはありません」
「では、何故、俺に聴取を?」
「二つの可能姓から……まぁ、一つは関係ないと思っていますが。とりあえず、可能姓の高い方から話しますと――非常に間接的ではありますが、この男が死んだことに高本さんが関わっていて、何かの情報を聞いているかもしれないからです」
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