有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

過去との対話_奉日本_4

奉日本_4-5

　中学一年の時に一つ事件が起きる。まぁ、これまでの日々を事件と呼べないのもいかがなものかと思うが。
　時期的には中学一年の冬。父が会社の忘年会に呼ばれた。小学六年生の秋頃から休職していたが、夏頃に一度復職したものの数ヶ月でまた病気を理由に休職していた。そこに、

『忘年会だけでも参加しませんか？』

　そんな電話がかかってきたので父は上機嫌だった。そこには会社から忘れられなかったことや必要とされているんだ、という感情があったのだと思う。
　一方で俺も友人達から今年ももうすぐ終わり、ということでささやかなパーティーをしようと誘われていた。父を家に残すとどのような仕打ちを受けるか解らなかったから、そのことは話せなかったのだが、この上機嫌のときに話したら問題なく許可を貰えた。

　その日は友達と楽しく過ごした。
　父から渡された小遣いでお土産を買い、それを家を騒ぐ場所として提供した幹事の友人に渡したあとは、美味しい食事やゲームなどをして楽しく盛り上がった。
　終わったのは夜の十時過ぎ。余ったお菓子などはお土産として貰って帰った。家に帰ってもまだ父は帰っていないと思っていた。それは彼が、

「二次会とか行くと帰りは遅くなるから先に寝ていていいぞ」

　なんて言っていたから。
　だから、その日は楽しい一日で終わる――そう思っていた。