有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_奉日本_1

奉日本_1-1

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 自分の家庭環境が正常か――そんなことは、その環境の中にいて、それが当たり前になっている者には解らない。子供だったなら尚更だ。

 それに付け加えて、ドラマなどの創作物は家族の尊さを説き、教師は両親を大事にし、言うことを聞くように教育する。
 今でこそネグレストや幼児虐待などのことが取り上げられるが、俺が子供の頃は寧ろ逆だ。親を大事にしない者は親不孝者の烙印を押され、子供が親に逆らい親が不幸な目にあうと子供が最低だの、子供が不幸な目にあうと自業自得だの……兎にも角にも『親は子供を大事にし、子供は親を大事にする』それが当たり前で、『子供は親が働いて面倒を見て貰ったのだから、親が働けなくなったら子供が働いて面倒を見るものだ』そんな風潮があった。

 そこには親と子の健全な関係とその親を一人の人間として尊敬し大切にしてあげたいと思うこと――そんな隠された条件が存在することを誰も教えてはくれなかった。
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