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『本日、お話があります。ユースティティアとして聞きたいことがありますので、二人で話が出来る環境だと助かります。無理そうでしたら、別の場所をこちらで用意致します』

 今日の朝、開店前に奉日本の店に有栖から電話があった。その口調は重々しく、とても今日のランチメニューを聞いてくる様子は無かった。また、彼女がユースティティアの名前を出した、ということは、これは捜査だということを伝えているのだろう。
 奉日本は了承し、本日は早めにランチタイムを切り上げた。話の内容が混み合うようで、仮に自身が連行されるようなことがあるならば、臨時休業にすれば良い、と考えていた。一日休んだとしても経営に影響があるわけではなく、特別に誰かと会う予定もない。

「さて、と……」

 ランチタイムで使用した食器や調理器具を洗い終え、一息をつく。時計を確認すると、あと十五分ぐらいで有栖と会う約束をした時間だ。
 奉日本の元には多くの情報が集まり、彼はそれを完全に把握している。故に、彼は最近のユースティティアについての状況を理解していた。
 有栖が聴取を受けたことも、我孫子が捕まったことも。だから、このあと有栖が何を聞きに来るかも想像できる――いや、そのことについてはここ最近の様々な情報から予測できたのではなく、もっと前から予感していたのかもしれない。

 奉日本は静かに目を瞑った。
 それは心を落ち着かせるのではなく、きっとこのあと追求されるであろうことに備える為の予防措置だ。
 自身の過去について、急に聞かれても七割ぐらい平静を装うことが出来る。だが、感性が鋭い者には勘づかれるかもしれない。だからこそ、万全を期する必要があるだろう。奉日本からすれば有栖は勘が鋭いタイプだ。

 過去を廻る旅――それは経験した時間では長いものだが、頭の中で廻るのは短い時間で済む。有栖が来るまでには充分に終わるだろう。過去を思い出し、噛みしめて、受け止める。それは過去のことを聞かれたときに、自身の中に抗体を生み出すことにもなる。彼は時々そうやって、抗体を生み出し――これまで耐えてきたのだ。
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