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特務課_4

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「殺人ですか?」
「えぇ、我孫子の魂胆はこう。アース博士が行っていた『ワクチン』の開発が完了した際に、その情報を事前に得られるように手回しし、『ワクチン』を運搬する運び屋を襲撃して『ワクチン』を自分の物にしようとした」

 そうすることで我孫子は『レシエントメンテ』に対抗する『ワクチン』を唯一持つ自分は対等になれると考えた。もし、彼に何か危険なことをしようとすれば『ワクチン』を発動させ、『レシエントメンテ』を破壊するぞ、と。

「『ワクチン』ってデータですよね? 運び屋を使うってどういうことですか?」

 反保が違和感を覚えた部分に質問する。京はその疑問は当然だ、と言わんばかりに小さく頷き、答えた。

「『レシエントメンテ』と『ワクチン』の作成と管理の仕方は特殊だったらしいの。共にネットワークに接続されていないアース博士がプロテクトを組んだパソコンで作成されていたらしいわ。万が一にでもネットワークを経由して情報を漏らさない為か誤作動を防止する為の手段か……そのどちらかだとは思う。そして、『レシエントメンテ』はアース博士の手元で『ワクチン』はコーポ松下、という場所で管理、更新されていたらしいわ」
「コーポ松下?」

 突然の聞き覚えのある単語に、有栖は思わず反応した。

「どうしたの?」
「いえ……一度捜査で関わったことがあったので。でも、今は更地ですよ?」
「どうやら前管理人が生きていた頃の話だろう。最近の管理人は全く知らなかっただろうな」

 佐倉も有栖がコーポ松下に関わったことは知っている。今は冷静だが、最初に知ったときにはそれなりに反応もしたのだろう。

「しかし、『レシエントメンテ』と『ワクチン』を二つ離して作成と管理を行っていたのは何故でしょうか?」
「当時、この件には詩島組が関わっていたらしい。『レシエントメンテ』は警察が『ワクチン』は詩島組が管理することで対等であろうとしたんだろうな。まぁ、今はその詩島組も壊滅してしまったけどな」

 反保の質問に佐倉が即答する。ある程度の疑問は佐倉と京で調べてきたのだろう。部下の質問にも答えることで、互いの認識と理解が深まっていく。

「今考えれば、サイバーフェスで詩島組がアース博士を狙ったのは『ワクチン』を失ったから『レシエントメンテ』を狙った可能姓も考えられますね」
「確かにな。まぁ、今となっては知りようのないことだ」

 詩島組は警察に引き渡された。これも誰かが裏で糸を引いていたのかもしれない、と有栖も反保も同じことを考えていた。

「それで、我孫子は運び屋を殺害し『ワクチン』を奪った。その情報を聞き出した今、ユースティティアに『ワクチン』がある、という認識で良いんですよね?」

 有栖の問いに佐倉と京は同時に大きな溜め息を吐いた。その行動と表情から彼女の問いに対してポジティブな回答が得られないことを部下の二人は嫌でも察してしまった。

「ここからが厄介なことになっているの。今、『ワクチン』がどこにあるのか解らないのよ」
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