有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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 佐倉と京が特務課に訪れたのは有栖が出社してから一時間ほど経過してからだった。連日の業務による疲労の色が顔に薄ら見えてはいたが、それでも毅然としている姿には頼もしさを感じる。

「有栖さん、反保くん。ちょっと来て、共有しておきたい情報があるの」

 京にそう言われ、二人は同時に立ち上がると課長席の周辺へと集まった。

「佐倉さん、お願いします」
「あぁ。まずは結論から話そう。今回の聴取で我孫子から重要な情報を得た」

 何を、どうやって――その部分について佐倉が明言しないのは、それを二人が知る必要がなく、その説明する時間すらも無駄だということを意味していた。それを理解しているのか、二人も余計な質問はせず聞くことに専念している。

「我孫子が警察の内通者であることを自供した。今回のデータベース改ざんの件も『レシエントメンテ』が手に入って、警察がユースティティアを掌握するまでの協力した際の見返りとして要求していたそうだ」
「……そうですか」

 有栖が小さく呟き、頷く。

「そして、以前も話したが内通者は一定の期間で、こちらに悟られないように消されていたが我孫子はその期間が長く、消されていない。それについては我孫子に『消したくても消せない』理由があると考えていたが、それも予想通りだった」
「『レシエントメンテ』に対して何か情報を持っていた、ということですか」
「反保の言う通りだ。我孫子が持っていた情報――それは『レシエントメンテ』を削除し、これまでの改ざんされたデータを修正する『ワクチン』についてだ」
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