有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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現在_我孫子

我孫子_5

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「……聞いてやるよ」

 それは負け惜しみであり、佐倉のこれまでの発言を肯定した上で、ぶら下がる蜘蛛の糸を吟味しようとしているようだった。

「お前の知っている情報を全て俺達に話せ。もちろん、警察に対して講じていた策も全てだ」
「馬鹿か。それで何故、俺が助かる?」
「それをお前から聞き出したことを隠すことなく、俺達が動く。そうすれば警察はお前よりも、俺達の行動を阻止することを最優先にするはずだ」
「標的が変わるってわけか」
「そうだ。その間はユースティティアでお前を確保――いや、逮捕する。こっちの牢屋が一番安全だ。警察の世話にはなりたくないだろ?」
「お前達が動いて、今の警察を倒し、『レシエントメンテ』を崩壊させる――いや、天使に勝てば大逆転ってか? 随分と確率の低い賭けだ。しかも、人生をベットときたか……やりたくねぇな」
「オールインしか手はないぞ。背中なら押してやる……お前が警察と繋がっていたことを調べる際に解った、お前と関連した裏社会の人間がいるだろ? こいつらはお前が聴取を受けるのを待っている期間に――全員死んだぞ」
「なっ――」
「相手は問答無用の無差別だ。この状況でお前に協力する奴はいないし、講じてる策が外部の協力者を用いるものだとしても、お前に協力するより警察に身売りに走るのも時間の問題だろうな」
「…………」
「もう一つ、裏付けの補足だ。お前が薬物の取引に関与している情報が匿名でリークされた。こっちでも調べたが、過去にユースティティアが捕まえたカラーズって奴らが隠していた顧客リストが急に見つかった。そこにお前の名前があったそうだ」
「あの薬か。しかも、その情報は警察が持っていたはずの……どうやら、警察は俺をお前らに捕まえさせた上で、佐倉の言うようにお前らが動くことを期待しているようだな。反乱分子と『あれ』を同時に潰すつもりか」

 我孫子は大きく息を吐くと、小さく笑った。それは全てを諦めて、妥協した男の哀愁はあれど同情する価値のないものように佐倉には映った。

「佐倉、俺を逮捕しろ。罪状は――殺人だ。俺は一人の男を殺害している。そのことも含め、全て自供してやるよ」
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