有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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「その後、ユースティティアは捜査本部を解体し、人事も総入れ替えを実施。刑事課も三つの係を設ける形になったと。元刑事課の課長である我孫子は生活安全課へ異動。貴女に関しては希望する配属を実施することを条件で示談に同意した、と」

 佐倉が有栖の話したユースティティアが提示した案をまとめる。彼女は頷くと、

「配属の他にも退職の道も提示されました。退職金の上乗せで」
「なるほど。でも退職は選択しなかった」
「はい。自分はこのままでは専門学校を卒業した後、ユースティティア養成学校と本隊に一年経たずで退職したことが最終職歴になります。その職歴は何故か、と他の職場で聞かれるでしょうし、上手く説明することも考えつきません。定職に就けず生活苦になるのは御免ですから」
「なるほど……」

 佐倉はデータベースで改ざんされたであろう部分について全ての聴取を終えると周囲と目線を合わせ、頷く。

「以上で聴取を終了致します。他に何か言い残したことはありますか?」

 有栖は視線を天井を見るように軽く顔を上げると、

「一つだけ」

 そう言った。

「何でしょうか?」
「自分が再度ユースティティアの前線部隊を希望した際に前例がない、とのことから話し合いが難航しそうになりました。しかし、殉職した当時の先輩であり特務課の一色課長が自分を面倒見る形で引き抜き、前線での活動をサポートしてくれました。その際に――

『ここに残って良かった、と一回ぐらいは思わせたるわ』

と、言ってくれました。その発言に対しては嘘偽りがなかったことをここで証言させてください」

 有栖の言葉に京は彼女を真っ直ぐに見つめ、佐倉は小さく笑った。そして、

「承知しました。以上で聴取を終了致します。今後はもう一方の当事者の話を聞き、双方の内容に整合性が取れるまで繰り返します。それまで貴女の身柄は拘束となります」
「解りました」

 佐倉の言葉に有栖は同意した。
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