有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_有栖_7

有栖_7-9

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 二回目の話し合いは一週間後に開かれた。今回の相手は総務部長だけではなく我孫子の上長に該当する捜査本部長も一緒だ。少し強面の顔で厳粛そうな雰囲気がにじみ出ていた。
 自分が席に着くと総務部長が前回までの話し合いの経緯を話し、その後、

「弊社としては――」

 と付け加え、今から話す内容はユースティティアの回答であることを示した。

「我孫子課長は深く反省しており、これ以上の対応は不要だと考えています。彼の行動に計画性があったかどうかは、複数人は貴女と同意見ですが、同数ほどの我孫子課長を擁護する意見もあり立証は不可能かと」

 ここで少し驚いたのは、前者についてだ。後者については我孫子が言いくるめて他の隊員を味方に引き込んでいることは予想できていた。しかし、自分の味方になってくれている隊員がいたことが予想以上に多く、それは嬉しい知らせだった。

「また……本件については我孫子課長だけでなく、有栖隊員も『本気で拒絶』しなかったことに落ち度があると判断しています。そのつまり、酩酊状態でも送迎の際に振り解いたり、声を出したりはできた、ということです。なので、本件はこれ以上は不問と――」
「今のことを市民に対しても同様のことを言うのですか?」

 自分は遮るように言った。

「え?」
「女性が酩酊状態になり、強姦をした犯人がいたとしましょう。その被害者に対し、酩酊状態程度なら『本気で拒絶出来たはずだ。本気で拒絶しなかった貴女が悪い』と言うのですか? その女性が貴方の知り合いかもしれない。子供かもしれない。孫かもしれない。それでも同じことを言うのですか?」
「それは……」
「この場での会話内容は自分の方でも録音しています。本件の対応をこれで終了するのならば、警察を通し、労働省へ相談します。もちろん、報道関係にも。自分はあらゆる手を尽くします」

 自分の発言に総務部長は口を閉じたが、捜査本部長は違った。

「警察に訴えたとしても『民事不介入』の原則で刑事事件としての立件は不可能だ。また、実質被害が生じていない為、捜査もされないので無意味だぞ」

 低く、言葉で押しつけるように、そして、視線で制圧するように自分へと伝える。それに対し、自分は真っ直ぐに視線を返し、

「相談した内容を事件化することが目的ではありません。表面化させることが目的です。ユースティティアの隊員が警察に相談した……充分でしょう?」

 自分の言葉を受けて、捜査本部長は小さく笑うと、

「総務部長。どうやら抜本的な解決策を検討する必要がある。貴女には再度のその案を聞いた上で判断して欲しい。良いかな?」

 そう言ったことに対し、自分は一礼し、

「宜しくお願いします」

 それだけを短く伝えた。
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