有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_有栖_7

有栖_7-8

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 後日、自分はユースティティアの人事総務部の部長と面会する機会を得た。場所は、ユースティティアの会議室の一室で、定年間近のいかにも温和そうな部長が一対一で対応してくれた。

「えっと……有栖さん、ですね。今から事前に電話で聞きました内容について詳細を聞きたいと思います。その前に、あの……その格好は?」
「気にしないで結構です。今の自分にはこの服装が適してると思ったので着ているだけですから」

 このときには、自分は今と同じように男性隊員と同じ制服を着ていた。これまで着ていた服を着る気にはなれなかったし、スカートは二度とはかないと誓った。

「はぁ、そうですか。では、詳細について再度お話頂けますか?」
「はい。自分は我孫子さんが事件解決に伴い開いた祝勝会に参加。そして――」

 自分はそこからの経緯を詳細に話した。ただ。ホテルには入らずその手前で酩酊状態から覚めて逃げたことにした。これは事前の電話でも同じ内容を伝えている。
 今となっては産婦人科などに連絡しなかったことは自分にとって都合が良かった。本当の事実を表面上は隠すことが出来る。『女』として被害があったことがデータとして残ってしまえばそれは一生消えない証拠となり、他の人にも知られる可能姓がある。
 そして、強姦罪まで問うていないとなると、我孫子もそれを察して便乗してくるはずだ。

「はい。この概ね電話で聞いた内容に差異はありませんね。えーっと、該当の上司にもヒアリングを行っております。こういうのは双方の話を聞かねばなりませんから」
「我孫子さんはどのように主張していますか?」
「えーっと……貴女が二次会の場で強いお酒を飲み、酩酊状態になった為、介抱と送迎をする必要があり、タクシーに乗せた、と。住所を確認しようにも酩酊状態で受け答えができず、致し方なくホテルの利用を決断したそうです。尚、今までのボディータッチに関してもコミュニケーションの一環でセクハラの意図はなく、今後、貴女が嫌がるなら二度と行わない、と。軽率な行動を反省していました。この点を鑑みて、厳重注意、という処分で対応しようかと」
「二次会で酩酊状態になったのは確かですが、我孫子さんは他の隊員が自分の住所を確認しようとしてくれたのを断り、自分をタクシーで送迎することを強行しています。自分の住所を知らないことは明らかであるにも関わらず。この時点で酒で酔い潰し、それ以降の行動に計画性があったと判断できます。また、ボディータッチに関しては何度も拒否の意思表示を行っていました。これは周囲の隊員に聞いて頂ければ明示かと。当人も訴えれるなら訴えてみろ、という発言をしたことがあります。この点からも非常に悪質であり、厳重注意では処分としては不十分だと判断します。対応を再検討願います」

 自分がはっきりとそう告げると、総務部長は頭を抱えて深い溜め息を吐いたのだった。
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