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現在_有栖_3
有栖_1
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「その後、タクシーが着いたのは、とあるホテルの前でした。そこで目が覚めた『自分』は部屋に入る直前で身体が動いたので逃亡しました」
有栖は言い淀むことなく、目の前の三人に伝えた。彼女以上に聞いている方が苦痛を受けたかのように眉間にシワをよせたり、目線を逸らしたりの反応を見せてくれた。京はいつの間にか強く拳を握りしめていて、今にも誰かを――いや、そこに我孫子がいたら殴りそうな怒気がにじみ出ていた。
「ここまでが自分が受けた我孫子からの被害です。ここから暫しの休職を挟み、冷静になった自分はユースティティアの人事部や上層部に報告と相談を行いました。その話に移りますが宜しいですか?」
「はい、続けてください」
話をする有栖は誰よりも冷静だ。それは彼女が『隠された真実』を話していないからだった。
ユースティティアに登録されたデータベースにはここまでの話とこのあと有栖が人事部や上層部と話し合った内容が登録されていた。そこに嘘はない。ただ、一部の真実を彼女が明かすことなく隠したのだ。
決してもう日に当たることのはない地中の深くに、海底の溝に、それは意図的に隠されたのだ。
有栖は言い淀むことなく、目の前の三人に伝えた。彼女以上に聞いている方が苦痛を受けたかのように眉間にシワをよせたり、目線を逸らしたりの反応を見せてくれた。京はいつの間にか強く拳を握りしめていて、今にも誰かを――いや、そこに我孫子がいたら殴りそうな怒気がにじみ出ていた。
「ここまでが自分が受けた我孫子からの被害です。ここから暫しの休職を挟み、冷静になった自分はユースティティアの人事部や上層部に報告と相談を行いました。その話に移りますが宜しいですか?」
「はい、続けてください」
話をする有栖は誰よりも冷静だ。それは彼女が『隠された真実』を話していないからだった。
ユースティティアに登録されたデータベースにはここまでの話とこのあと有栖が人事部や上層部と話し合った内容が登録されていた。そこに嘘はない。ただ、一部の真実を彼女が明かすことなく隠したのだ。
決してもう日に当たることのはない地中の深くに、海底の溝に、それは意図的に隠されたのだ。
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