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過去との対話_有栖_6

有栖_6-9

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 我孫子と『私』はカウンター席に移動した。

「マスター、いつもの二つ」

 我孫子の注文にマスターが静かに頷く。『私』が何を注文したのか不思議そうにマスターの方を見ていると、

「俺はな、真剣な話をするときに飲む酒は決めてるんだよ。まぁ、それが仕事しろ、女を口説くときにしろ同じ酒なわけだ」

 得意気に我孫子は鼻を鳴らす。

「あんまり強い酒は飲めませんよ」
「おぉ、そうか。確かに少し強めの酒だ。一口飲んで厳しそうなら無理して飲む必要はない」
「……解りました」
「ところで、俺は話の腰を折られるのが大嫌いだ。カウンター席に移動したのも他の奴らの余計な意見を聞きたくないからだ。だから、トイレとか行っとくなら今のうちだぞ。もし途中で席を立つようなら同じ話はしない」
「一応済ませてきます」
「懸命な判断だな。どうせ酒ができるまでに少し時間はある」

『私』は離席し、トイレに行き用を済ませた。そして、戻ると我孫子の前には一つのカクテルが置かれていた。『私』も隣に座るとマスターが同じもの差し出してくれた。

「こちらグランドスラムになります」

 カクテルグラスの中には薄い茶色の大人びた雰囲気のある液体が注がれていた。

「乾杯」
「……はい」

 我孫子がグラスを持ち、急かすように『私』に突き出す。グラス同士を軽く触れさせると、我孫子がくいっと一口、二口と飲む一方で『私』は初めてみる酒に恐る恐る口をつける。
 少しスパイスが聞いた味とラム酒のような香りが鼻孔を刺激した。正直、アルコールも強く、あまり好きな味ではなかったので顔をしかめてしまった。

「無理して飲む必要はない。大事なのは今から話すことだからな」

 我孫子の言葉に甘え、『私』はグラスをカウンターに置いた。
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