有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_有栖_6

有栖_6-6

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 その呼び方も最悪だったが、それ以上に周囲も予想外だったのか少しの沈黙が挟まった。おそらく周囲も、

 また有栖への嫌がらせだ

 と、考えていたのだろう。いや、それを受け入れている周囲も最悪なのだけど。

「おい! 早く来い!」
「は、はい」

 我孫子に呼ばれ、同僚の女子隊員が彼の席へと近づいていく。その彼女の表情は暗く、それを見守る周囲の表情も暗い。まるで今から独裁者によって無実の罪で死刑が行われるようだった。
 そこから宴会は再開したが、『私』は我孫子と呼ばれた女子隊員の様子が気になった。女子隊員の肩を抱き寄せたり、耳元で何かを囁いたり、見ていても不快だったのだから当人はたまったものではないだろう。
 そこまでは我孫子にはよくある行動だったので、可哀想だが耐えて時間が流れれば終わる――そう思っていた。しかし、行動はエスカレートし、彼は彼女にあまり飲めない酒を強制的に飲ませ始めた。

 ――これは危ない

 率直にそう思ったと同時に、過去の『私』への対応同様にきっと周囲が助けないことも理解していた。だから……『私』が助けるしかなった。

「お酌、代わりますよ」

『私』は作った笑顔を貼り付けて、我孫子と同僚にそう言った。
 我孫子は怪訝そうな表情を浮かべ、同僚は瞳を潤ませて『私』を見ていた。

「なんだ、有栖。あれやこれやと文句言ってるけど、結局は俺のことが好きなんじゃねぇのか?」

 馬鹿でかい笑い声と『私』を憐れむ周囲の目。それは間違いなく『私』の行動を勇敢ではなく、愚行だと認識していた。
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