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過去との対話_有栖_6
有栖_6-4
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我孫子の当時の態度は充分に問題だった。だけど、それを周囲が強く言えなかったのは、彼の成績が優秀だったからだ。刑事課で常に大きな事件を解決し、市民からの信頼と知名度との低いユースティティアにとっては重宝される存在だったのだ。
だけど、今考えると我孫子が警察と繋がっていたならば、その実績も警察と協力した上で成し遂げたものかもしれない。彼がユースティティア内で権力を持てば、警察としてもユースティティアを内部からコントロールできることになるのだから。
しかし、それを知らない当時の『私』も周囲も我孫子を糾弾することはできなかったのだ。そして、我孫子もそれを理解して、『私』への行動をエスカレートさせていった。
肩を揉む行為から挨拶などのすれ違うタイミングで太ももやお尻などの下半身を触られることが多くなった。毛が逆立ち、皮膚が波打つような不快感が身体を走る。ニヤニヤと笑う我孫子を『私』は何度も睨んだ。だが、その反応が楽しかったのだろう。頻度は増すばかりだった。
一方で同僚の女子隊員には被害がなかったらしい。それは会話の中で『私』が愚痴っぽく話した際に発覚した。まぁ、『私』は彼女も当然のように同じ被害にあっているのだと思って話したのだけど。
「それ完全にセクハラだよ」
言うに及ばないことを彼女は言葉にしてくれた。当時の『私』は何で自分だけ、という不満よりも彼女が被害にあっていないことに安堵したものだ。
『私』なら大丈夫。『私』なら耐えられる。『私』なら戦える。
そんな思いがあった。
「けど、一回は指摘というか言い返しても良いんじゃない? 課長も目を覚ますというか抑止力になるんじゃないかな?」
そのアドバイスを聞いて、実行する機会がすぐに訪れた。
次の休憩時間に、コピーをとっている『私』に、また我孫子が近づき太ももを触ったのだ。
「やめてください! それセクハラですよ!」
少し大きな声で、睨んで言ってみせた。近くの人達には聞こえたようで、驚いたようにこちらを見ている。我孫子は――驚きもせず、まるで自身が不快な出来事にあったかのように、
「あぁ? セクハラだぁ? じゃあ、何だ? 俺を訴えるか? 何の役にも立っていない新入社員のお前と実績を残してきた俺……この会社はどっちの言い分を信じて、どっちを大事に扱うか解ってんのか、馬鹿が! 少しは会社の役に立ってから物言えよ!」
そう言って、近くに机を蹴っ飛ばし去って行った。
返された言葉に何も言い返せず、『私』は悔しさに震えた。
だけど、今考えると我孫子が警察と繋がっていたならば、その実績も警察と協力した上で成し遂げたものかもしれない。彼がユースティティア内で権力を持てば、警察としてもユースティティアを内部からコントロールできることになるのだから。
しかし、それを知らない当時の『私』も周囲も我孫子を糾弾することはできなかったのだ。そして、我孫子もそれを理解して、『私』への行動をエスカレートさせていった。
肩を揉む行為から挨拶などのすれ違うタイミングで太ももやお尻などの下半身を触られることが多くなった。毛が逆立ち、皮膚が波打つような不快感が身体を走る。ニヤニヤと笑う我孫子を『私』は何度も睨んだ。だが、その反応が楽しかったのだろう。頻度は増すばかりだった。
一方で同僚の女子隊員には被害がなかったらしい。それは会話の中で『私』が愚痴っぽく話した際に発覚した。まぁ、『私』は彼女も当然のように同じ被害にあっているのだと思って話したのだけど。
「それ完全にセクハラだよ」
言うに及ばないことを彼女は言葉にしてくれた。当時の『私』は何で自分だけ、という不満よりも彼女が被害にあっていないことに安堵したものだ。
『私』なら大丈夫。『私』なら耐えられる。『私』なら戦える。
そんな思いがあった。
「けど、一回は指摘というか言い返しても良いんじゃない? 課長も目を覚ますというか抑止力になるんじゃないかな?」
そのアドバイスを聞いて、実行する機会がすぐに訪れた。
次の休憩時間に、コピーをとっている『私』に、また我孫子が近づき太ももを触ったのだ。
「やめてください! それセクハラですよ!」
少し大きな声で、睨んで言ってみせた。近くの人達には聞こえたようで、驚いたようにこちらを見ている。我孫子は――驚きもせず、まるで自身が不快な出来事にあったかのように、
「あぁ? セクハラだぁ? じゃあ、何だ? 俺を訴えるか? 何の役にも立っていない新入社員のお前と実績を残してきた俺……この会社はどっちの言い分を信じて、どっちを大事に扱うか解ってんのか、馬鹿が! 少しは会社の役に立ってから物言えよ!」
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