有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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現在_ならず者

反保_1-1

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 有栖が聴取を受けている日の昼過ぎ。反保は特務課での雑務を処理した後、昼食を外で済ます為に外出していた。
 特務課としての今後の動き方については反保も聞いているが、組織内で周知をされているわけではないし、ただでさえ腫れ物扱いの部署がデータベース改ざんの件で聴取を受けている、という情報は完全に封鎖できないので噂として広まっている状況だ。腫れ物というよりは組織の癌のように見られているのだろう。
 反保自身は周囲の評判や視線よりも大事なことがあるので気にはしていないが、自身がいることで気分を害されるのも気が引けたので、社食を利用しないようにしていた。
 状況が良くないとはいえ、組織内の仲間であることは確かだ。そこは気を使ってもいいだろう――と、相手はどう考えているかは定かではないが、彼はそう考えていた。

 いつもは出勤時にコンビニで昼食を買って、事務所で食べるのだが、今日は気分転換の一つでも、ということで外食をすることにした。
 入ったのは老舗のラーメン屋。そこそこ賑わっており、テーブル席が一つ空いていたが来るであろう複数人の客を考慮して、反保はカウンター席へと通された。様々な中華料理の入り混じった香りがする空間を少し油で滑る床に気をつけながら歩いて行く。

「あっ……」
「おっ」

 カウンター席に座ったときに、隣の席の人物と視線がぶつかった。それはよくあることなのだが、その人物が予想外過ぎて互いに思わず反応してしまった。

 そこに座っていたのは――高良組の久慈だった。
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