有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_有栖_3

有栖_3-6

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「うむ、初めて食ったけど悪くねぇな」

 先程の公園を出て、少し歩いたところにある河川敷の橋の下。初老の男性と話がしたい、という『私』の要望は目の前でバリボリと食べられている夜食と引き換えに叶えられた。橋の下は歩行者の為に蛍光灯が牢獄のようなケースに入れられて設置されており、視界の確保は充分だった。当然、外部からの破壊行動から守る為のケースだけど、今思えば、牢獄の中の方が安全とは皮肉なものだ。

「それで話って何だ?」

 肉まん、チョコレート、スナック菓子、と『私』ならしない食べ順で食事を終えたその男性が聞いた。

「自分で言うのもなんだが、こんな怪しい奴に、わざわざ話なんてあんのか? しかも、ガキとはいえ女が、だ。温室育ちで危機管理能力のない馬鹿か単なる馬鹿かどっちだ?」

 彼からすればどちらにしろ馬鹿らしい。なかなかの言われようだが、今思えば、彼なりに心配をしていたのだろう。彼が不審者で『私』を襲おうと思えば、それは可能だったのだから。
 だけど、当時の『私』は何も考えず、ただ真っ直ぐに知りたいことをそのまま聞いた。馬鹿だったのだろう。

「先程の戦い方は何という格闘技ですか? 『私』にも会得出来ますか?」

 数的不利も体格差も跳ね返した戦い方――『私』がどこかで求めていたその答えが近いことに、たぶん興奮していた、と思う。
 そんな子供の問いに、その男性はスナック菓子のついた指を舐めながら質問に質問で答えた。

「何でそんなことを知りたい? 何で会得したいと思う?」

 その問いにも『私』は何も考えず整然とされない言葉を思ったままに伝えた。

 これまで様々な格闘技を習っていたこと
 これまで男性と戦って思ったこと
 そこから何かモヤモヤとしたまま答えのようなものを探していたこと

「なるほどな」

 彼は子供の言葉を馬鹿にせず、どこか理解のあるように聞いてくれた。そして、先程のコンビニのお菓子達よりは咀嚼された上で、答えと問いを『私』にくれた。

「俺の格闘術は我流だ。そして、お前でも会得出来るのか、と聞かれれば会得は誰でも出来る。俺が教えることを愚直に実行できるなら――と、ここまで言えば次の問は教えてくれるのか……それは最後の問の回答次第だ。俺が格闘術を教え、お前が会得すれば『力』を得ることになる。そこで、質問だ」

 そして、彼は一呼吸挟み、『私』を真っ直ぐ見つめて聞いた。

「お前――何で『力』が欲しいんだ?」
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