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過去との対話_有栖_3

有栖_3-3

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 その日は確か――金曜日の夜だった。次の日が休みで何となく夜更かしをしたくなって深夜にコンビニへ夜食を買いに外に出た。外は心地よい気温で、今年の夏は暑かったなぁ、とか思っていたから確か秋頃だったかな。

『私』の住んでいた地域はそこまで治安が悪いわけではなく、街灯も整備されていたので夜道が危ない、という感覚は薄かった。そこには格闘技の経験がある、という過信もあったと思う。

 コンビニまでの道中、『私』が誰かに襲われることはなかった。
 けど、肉まんとスナック菓子とチョコレートを買った帰り道。深夜一時頃だったかな。行きにも通った公園が帰り道では少し騒がしかった。
 若い男達が周囲の迷惑も、自身の声の大きさも理解せずに騒いでいた。彼等がいた公園はベンチとブランコと滑り台、砂場が一つずつしかない小さな場所だ。そんな場所だからこそ若者達が酒盛りでもして騒いでいるのだろう、と思い、絡まれないように素通りしようとした。

「こういう奴って実は金を貯め込んでるって聞いたぜ」
「持ってても仕方ないだろ? 俺らが有効に使ってやるよ」

 その声は明らかに誰かに投げかけるようで、威圧的なものだった。仲間同士の他愛ない雑談ではない。だから、『私』は一度素通りをしたあとで足を止めて、戻って物陰から覗くように確認した。

 騒いでいる若者は三人。いかにも素行が悪そうな奴らだった。そんな彼等が取り囲んでいるのはベンチに座る初老の男性だった。おそらく五十歳ぐらいで細身でボロボロの紺の作務衣を着ていた。髪もヒゲも黒いけど手入れをしていないのか頭はボサボサで目が隠れ、口元は無精髭のようになっている。
 一見、ホームレスのように見えたし、若者達はそのように勘違いしたのだと思う。だけど、『私』はその人が一般的に見かけるホームレスとは少し違うように見えた。なんとなく旅人のような、世捨て人のような……まぁ、家を持たず放浪しているという点ではホームレスに該当するのかもしれないけど。

 そのように観察していると、その男性はそれはそれは面倒くさそうに吐き捨てるように言った。

「飯でも奢る気がないなら話しかけるなクソガキども」
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