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飯が不味い

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 唐突だが、皆さんは飯をどう食べて過ごしているのだろうか?

 俺は地球人として過ごしていた記憶はだいぶ薄れている。神様効果なのだろうが、知識は良い感じに残ってて有り難い。
 しかし人間関係やそこで何をしたかなどは思いっきり無くなっている。
 なのでほんの僅かしか思い浮かべることができないのだが、カップラーメンやサンドイッチをコンビニで買って食べていた記憶がある。
 あー後はフライヤーとかな。

 皆は異世界といえば何を想像する?
 魔法があるから色々な融通効きそうだなぁーとか、色々ご都合が働いてるんじゃねぇの? とか言ってきそうなものだな。
 ⋯⋯ま、だよな。

 しっかしまぁ当然の事っちゃ当然なんだが、異世界の食生活は⋯⋯⋯⋯一言で言って、終わってる。
 控えめに言って、終わってる。

 もう一度言うぞ?控e⋯⋯(強制カット)


 今日は珍しく外に出る日。
 一ヶ月に4回から6回。まぁ週1くらいのペースで街の外に出て、ゴブリン退治の依頼を受ける。
 なんでやるのかって? 
 そりゃ冒険者のノルマに関わってくるからさ。

 ギルドはしっかりしていて、採取系などの依頼と討伐系のを依頼をやらないとノルマとして達成されないことになっている。だからこうして月に数回出ないと冒険者の権利を剥奪されてしまうのだ。
 討伐対象は何でもいい。ラビットだろうがゴブリンだろうがな。
 
 「うりゃぁっ!!!」

 横一閃。それで俺の攻撃はハイおしまい。
 キレイに掻っ捌いたゴブリン(グロい)を脇に置いて、落ちた魔石を拾う。耳や分かりやすい討伐部位を魔法鞄に入れて一応の依頼は完了。
 依頼とは別に貢献度合いもあるらしいのだが、逆に言うと俺やアイツがやっているような大したことない依頼をこなしている方が度合いがデカイらしいので、あまり心配はしていない。

 それからしばらく歩いていたらボアがいたので、出来るだけ傷つけないように殺して血抜きからの解体。
 やっと手持ちのものでぶっ刺して肉の完成なのだが。

 「マジで調味料が恋しい」

 そう。まぁ肉に関してはむしろこっちの方が美味い度合いのレベルというやつが別次元なのだが、タレやその他のものが何にもない⋯⋯マジでなんにもないから、飯がマジで不味い。

 あるのは微妙なスープと肉、そんで売ってたカッチカチのパンである。

 「不味い、本当に不味い」

 これが転生してから一番キツイ問題だ。
 多分日本人だから倍そう思うのだろうが、飯が全部まずい。有り難い事にヴィンセントが俺の意図を知っているので、わざわざ高級なものも食わせてくれたし、まるっきりなんにも知らないわけではない。しかしそれにしてもクソほど最悪なのだ。

 油ギトギトで旨味なんてものは皆無。
 転移魔法なんてないので食材の狭さもある。
 そんな状態で分かる訳がない。

 「はぁ⋯⋯色々恋しい」

 唯一俺が我慢ならない中の一つが、この食事の不味さなのである。

 
 「んぁ?なんだノア?」
 「おいアリィ、なんかうめぇ飯はないのか」
 「お前この街で美味い飯なんかあったか?」
 「⋯⋯ないな」
 「だからねぇんだよ。何処行ってもそれは一緒だろ。あったとしたらどっかのお貴族様が独占するに決まってる。お抱えするーとか言う名の捕縛な。内容さえ分かれば後はポイっ、だからな」

 ⋯⋯これだから貴族は怖いのだ。
 まるで安心できん。

 しかしどうにか飯を改善したいが。

 「しっかし本当に飯とか寝床に関してはうるせぇよなぁーノアは。俺なんかちーっとも理解できん」
 「お前はうめぇ飯を食ったことがないんだろ。いつか教えてやるよ。うめぇ飯ってやつをよぉ」
 「ほほーん? なら教えてもらお──」

 アリィの頭がもじゃもじゃに耐えきれずに机に額をぶつける。

 「なんだ?飯か?」
 「リドル⋯⋯邪魔すんなよ」
 「あれ?一人?」
 「あぁ。依頼が終わってな」
 「依頼?なんの?」
 「今は春先だろう?これからに向けて肉を確保したいんだと。若い奴らが死んでるせいで、魔物がうるさいってのもあるが、冬眠から目覚めとる魔物がほとんどだからな⋯⋯間引きの意味合いもあるだろう」

 本当ダルい依頼も平然とこなすリドル達がすげぇよ。
 俺なんか絶対にやりたくないわ。

 「これはこれは銀ランクの魔術師殿、こんなところで間引きの依頼もこなさないのかな?」
 「うるせぇうるせぇ⋯⋯今はそんな気分じゃねぇんだよ。魔術師は戦う為じゃなくて研究者が一番なんだっつ~の」
 「ふんっ、一丁前な事をほざきおって。お前がまともなところを見せたことがあったか?」
 「⋯⋯⋯⋯ねぇな」

 気だるそうに手でシッシッしていたアリィだが、図星の一言で負けたと突っ伏した。

 「ノア、今日は珍しく昼はいなかったようだな。依頼か?」
 「討伐のね。流石に受けないと剥奪されちゃうし」
 「しっかり依頼以上のことはやってきたんだろうな?」
 「⋯⋯⋯⋯やるわけないじゃん」
 「はーーっ、ノアもアリィもなんでこんなていたらくな生活を送ってるんだか」

 額を覆ってリドルは憂いている。俺達はそれをどうでも良さそうに見上げるだけだが。

 「ってそうだ」
 「どうした?」
 「いやよ、最近海側の商人がやってきてよ、謎の食材が出てたんだよ。変なニョロニョロしてるやつ」

 ⋯⋯ん?

 「ちゃんと聞いてきたの?」
 「いや?」
 「なんでしっかり聞いてこなかったのよ!」
 「圧が強いな。そうだった。ノアは飯に関しては熱い男だったのを忘れておった」
 「そう。それで?何処に?」

 もしかしたら、海の幸が食えるかもしれない!
 ワカメ!待ってろよ!

 「え?街の南にある露店で⋯⋯って、もうノアがいなくなってたわい」
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