上 下
8 / 24

武器屋巡り

しおりを挟む
 「やっぱここよねぇ~。あら、ここもう少し張っててもいいんだよね⋯⋯」
 「おっ、面白い武器あるじゃん!やっぱダクライのおっちゃんの所じゃないとな!」

 武器を手に取って、俺は思わず店主のダクライのおっちゃんに声を掛けていた。

 ⋯⋯ん?ちょっと待て。今もしかして、あんな感じの割には意外とノリノリじゃん?とか思ったろ?
 違うな。正確には「環境に馴染んでいる」と言ってくれるかな?

 「んぉ? あぁ、これはな⋯⋯」

 今見ているのが多分地球の名前で言うところのソードブレイカーだ。形状から見てもほぼ間違いないだろう。
 現状俺が使用しているのは故郷のロングソードで、ソードブレイカーを忍ばせてパキン!といかせるみたいな場面ありそうじゃね?

 「またこんな変なのばかりうちの箱から見つけよって」
 「武器屋に置いてあるのは全部有効活用できるものしか置いてないでしょ?」
 「まぁそうだが⋯⋯」
 
 ここはシャルの冒険者たちなら必ず一回は来ると断言しても良い武器屋⋯⋯ダイ。
 ダクライは卓越した腕を持つ職人だが、性格がかなり良いことから、初心者から上級者まで、みんなここで発注したり見物したりする。雑談の方で一日中盛り上がったりなんかもあったりした時もあったな。

 ⋯⋯ま、一言でいえば、めっちゃいいやつだから皆集まってくる、だ。

 それで俺は店の端にある売れない商品エリアに張り付いて珍しいものだったりレアなお宝探しに勤しむ。
 もしかしたら何かいいものがあるかもしれない。
 てかこの世界の人間からしたらゴミでも、俺からしたらお宝だったみたいな話はもう10回は味わっている。

 「ダクライのおっちゃん、なんでこんなでっけぇ鎌なんて作ろうと思ったんだ?」
 「貴族の坊っちゃんに頼まれたのさ。作ったんだが、すぐに飽きてそのザマさ」
 「こっちは?」
 「それも違う貴族様の発注物だ」

 鎌にキラキラの鉄剣。やはり男は厨二病にかかる時期が訪れるという訳だな。うん。

 「アタシ決めたわ!」
 「何がだ?」

 何やら意気込んでいるので近くに行ってみると、金貨レベルのする弓を手にとって買う決意をしていた。
 ほう、耐久性重視はまぁそうか。

 「ビビちゃん、金貨12枚」
 「⋯⋯くぅー」
 「まぁこれは上等なやつだからな。下げれねぇぞ」


 「ねぇノア?」
 「うん?」 
 「あたし達のパーティーに⋯⋯」
 「入らんぞ」
 「まだ最後まで言ってないのに!」
 「文脈的にそう言うだろうと思ったまでだ。大体、なんで俺なんだ? お世辞にも毎日酒場で呑んだくれてる落ちこぼれ野郎だぞ?」
 「そんな事⋯⋯!」
 「あるだろう? 実際、今日だって俺達が呑みまくってる最中にやってきたじゃないか」

 俺としてもなぜここまで好かれてるのか理解できない。
 別に何かを知ってる訳でもないわけだしな。

 「い、いいのよ!そんな事は!」
 「まぁ多分俺は、ソロが似合ってんだよ。何も考えずに薬草採取して、街のお掃除して、偶に警備やったりして過ごすのがいい。そっちに入ったら毎日危険だし」
 「それは⋯⋯そうだけど⋯⋯」
  
 街を散策する俺達の視線の先の方にある一画で、何やらざわざわしている。

 「平民が!これは見世物ではないのだぞ!」

 おぉ⋯⋯ありゃ王都の貴族様だ。
 着ている服で大体わかる。

 「なんでこの街で?」
 「ウーロン伯爵、ラインハルトに会いたくて仕方ないって噂は本当だったのね」
 「なんでそこでラインハルトの名前が出てくんだ?」
 「なんで⋯⋯?そりゃ、今やラインハルトの影響がもろに広がってる状況だからでしょ? 今、大陸で景気がいいのは王都付近一部だけ。あとは皆微妙か不作。ラインハルトの影響力を一心に受けているこのシャルの街だけが今や筆頭稼ぎに躍り出そうなくらいよ」
 「そんなにか」

 思わず唖然としてしまった。ラインハルトの影響力の大きさを少し舐めていたかもしれない。
 恐ろしくも感じる。

 うー怖え怖え。知識チートはやり過ぎるとマジでこうなりかねんから仮想の人物で行っててよかった~!
 いや一瞬自己主張しようか迷ってたんだけど、この世界の貴族マジで怖いから、自己主張やめたんだよね。

 全然思ってた異世界じゃなかったというか⋯⋯まぁ当たり前というか。
 本当不敬罪って怖すぎる単語だわ。その点、シャルの領主は丁寧で物腰柔らかい事で有名だ。

 「なんでウチに言わなかったんだー!とか叫んでたらしいよ?どうせ無視してたくせに」

 普通そうだわな。いきなり手紙でこうすれば量産出来ますよーとか信用なさ過ぎだわな。
 シャルの領主はよく実行したと思うわ。

 「だろうな。ここの領主様々ってやつだな」
 「あと何か必要なものある?」
 「いや?特に俺はないよ」
 「じゃあこのままウチのパーティーハウスに来る?」
 「あ、待って⋯⋯それまた今度でいい?」
 「んー、まぁしょうがないから許したげる。用事?」
 「あぁ。ちょっとな」
 「⋯⋯女じゃないよね?」
 「ビビはなんの心配してんだよ」

 ギルド近くまで戻り、俺とビビは解散した。
 そして俺は、歩きながら見覚えのある人間を目撃したので、気になってその現場の方へと歩いていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...