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異世界転移編
一悶着
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踏破から1週間後。
俺はカルデア冒険者ギルドに用事があった。というより、呼ばれていた。
「番をしていた者がバレて不正を口にしたと?」
「あぁ。こればっかりは俺の失態だ」
契約の魔法があったのにそれを使用しないなんてアホすぎた。
「では、本日すぐにギルドへ向かうのですか?」
「あぁ、すぐに向かって出来るだけ早く帰宅する。その間留守を頼んだ」
「はいっ!」
軽くガルの肩に手を置き、俺はギルドへと向かった。
・
・
・
ったくよ、迷惑な男だ。普段からあんなことをやっていたからこうして俺も巻き込み事故を起こした訳だが。
「ここか」
扉を開けて中にはいると、トラシバと同じく周囲の視線がやはりうるさい。
すぐに少し先の方で受付をしている人を見かけて並ぶ。やっぱり大変だよなぁ⋯⋯こんだけ何百人単位の受付なんて、俺ならやらないし、出来る気がしない。
⋯⋯もう尊敬の域だ。
「次の方⋯⋯⋯⋯ど、どうぞ」
「失礼。依頼ではないのだが、番の者が捕まった件で来たガゼルだ」
「しょ、少々お待ちくださいませ」
やはり皆の対応が変だ。俺が一体何をしたっていうんだよ。
大体一分後、受付の人は帰ってくるなり上へと案内をしようとするのだが、行きたくない。何かと面倒なことに巻き込まれかねない。
だが、今回は言う事を聞いておいたほうがいいな、不正は不正だし。
「こちらです」
「おー、君が噂の冒険者か」
「どうも」
直感が言っている。
俺はコイツが嫌いだ。
声からして会話してやってる感が否めない。こっちだって同じだ。
「なんだね、名前も言えないのか?」
「⋯⋯あ?」
「なんだね?不正だと言うから聞いてみれば、S級ダンジョンの交渉?そんな馬鹿なことを」
あぁ⋯⋯。なるほどそっちね。
「別に何でもいい。とりあえず不正の話だろう?」
「冒険者証を見せろ」
「ほら」
「おい、なんなんだ?F級冒険者の分際で」
「そっちこそ、初対面の相手にどういう態度と言動してるんだ?小さい時習わなかったか?」
ピキッとギルドマスターの額に青筋が浮かぶ。
「おい小僧、良い度胸だな?」
「そっちこそ、奥さんとお子さんに隠れてクソッタレな事をしでかしておいて⋯⋯いいご身分だな?」
「なっ、なんだと?」
「お前の名前はギルドマスターマッセロ。奥さんの名前はユリエ。それからお子さんのお名前はノンナ。最近の家庭の噂は⋯⋯」
「きっ、貴様!!一体何なんだ!只者じゃないな!?どこの者だ!」
真っ赤にして何言うかと思ったら。
「何って⋯⋯人様にそんな態度を取っておいて⋯⋯まさか自分に返ってくるなんて思わない理由はないだろう?」
「きっ、貴様⋯⋯!」
「あっ、ちなみに懐に入れている金の場所は⋯⋯⋯⋯」
「わっ、悪かった!!この通りだ!」
ギルドマスターが誠意の土下座をするが、俺は話を聞かずに続ける。
「すまないが、俺は最初から勝てる要素しか持っていないからこういう態度なんだ。まぁ⋯⋯黙っていたら言わないでおいてやるよ」
屈んで土下座をしているギルドマスターを見下ろす。
「証拠もあるし、女の居場所も知ってる。最初から言う事を聞く気なんて俺にはサラサラないんだ。余計な手間が省けて良かった良かった」
「で、では⋯⋯どう致しましょうか⋯⋯?」
さっきとは別人のように掌を合わせてスリスリ媚びる声で尋ねるギルドマスター。
「お互い不正はなかった。な?簡単だろ?」
「仰る通りです!簡単ですね!」
「そうそう。俺はF級冒険者という劣等冒険者の看板が欲しくてこの位置付けに居るんだよ。口添え頼むよ、な?」
バタン。
よし。これで安心安心。
降りた先には荒くれ者たちが異様な視線を向けられていた。
⋯⋯なんだ?
「C級ダンジョンを攻略したのは本当みてぇだな」
若い茶髪の青年を筆頭に数人が立ち上がって俺を囲んだ。
「それで?⋯⋯何か?自分の勢力に欲しいってか?」
「良い度胸だ────」
軽いお遊びの裏拳をヒョイっとやったつもりが、傍から見たら弾丸みたいな一撃になってしまい、凄い勢いで壁にぶつかった。
「⋯⋯は?」
「とりあえずそんな訳だ。お前らみたいな雑魚の相手なんてしてられねぇからそこをどいてくれ」
「言わせておけば──っ!」
殴りかかってくるのだが、今のを見ていなかったのだろうか?アホなのか?
「ちなみにだが、俺は優しくないぞ?」
「うるせぇ!!殺れ!」
「短気すぎるだろ、お前ら」
壊道──。
神門創一が作った⋯⋯いや、改良し完全に人を壊すために作った古式柔道をベースとした総合古武術の危険な技ばかりを集約した神門創一がよく使用する武術である。
上から殴りかかってくる一人は頸動脈を指捉え、数回の指圧によって一瞬動きが鈍る。その隙に腕をつかむ。
もう一人も同じく。二人の腕を掴んだガゼルは特殊なやり方で回し、空へと上に向かって軽口投げる。
すると数十回の回転ともに骨の砕ける音がギルド内を完全に支配する。
数人のうちリーダー格の青年以外は地面に崩れ悲鳴を上げていた。
「終わりか?」
「つ、強え⋯⋯⋯⋯」
「お前が何級なんか興味はないが、こんなところでイキがってるくらいだから大したことはないのだろう」
キーン。
ガゼルは煙草に火をつける。
「お前も色々あるのかないのか知らんが、精々今の内に養生しておく事だな」
「は?なんの事だ」
「⋯⋯近い内それも分かるだろうな。お前らにとっては最悪で、俺にとっては天国みたいな話だ、それじゃあな。もう会わないだろうけど」
そう言ってガゼルはカルデア冒険者ギルドに背を向けた。
俺はカルデア冒険者ギルドに用事があった。というより、呼ばれていた。
「番をしていた者がバレて不正を口にしたと?」
「あぁ。こればっかりは俺の失態だ」
契約の魔法があったのにそれを使用しないなんてアホすぎた。
「では、本日すぐにギルドへ向かうのですか?」
「あぁ、すぐに向かって出来るだけ早く帰宅する。その間留守を頼んだ」
「はいっ!」
軽くガルの肩に手を置き、俺はギルドへと向かった。
・
・
・
ったくよ、迷惑な男だ。普段からあんなことをやっていたからこうして俺も巻き込み事故を起こした訳だが。
「ここか」
扉を開けて中にはいると、トラシバと同じく周囲の視線がやはりうるさい。
すぐに少し先の方で受付をしている人を見かけて並ぶ。やっぱり大変だよなぁ⋯⋯こんだけ何百人単位の受付なんて、俺ならやらないし、出来る気がしない。
⋯⋯もう尊敬の域だ。
「次の方⋯⋯⋯⋯ど、どうぞ」
「失礼。依頼ではないのだが、番の者が捕まった件で来たガゼルだ」
「しょ、少々お待ちくださいませ」
やはり皆の対応が変だ。俺が一体何をしたっていうんだよ。
大体一分後、受付の人は帰ってくるなり上へと案内をしようとするのだが、行きたくない。何かと面倒なことに巻き込まれかねない。
だが、今回は言う事を聞いておいたほうがいいな、不正は不正だし。
「こちらです」
「おー、君が噂の冒険者か」
「どうも」
直感が言っている。
俺はコイツが嫌いだ。
声からして会話してやってる感が否めない。こっちだって同じだ。
「なんだね、名前も言えないのか?」
「⋯⋯あ?」
「なんだね?不正だと言うから聞いてみれば、S級ダンジョンの交渉?そんな馬鹿なことを」
あぁ⋯⋯。なるほどそっちね。
「別に何でもいい。とりあえず不正の話だろう?」
「冒険者証を見せろ」
「ほら」
「おい、なんなんだ?F級冒険者の分際で」
「そっちこそ、初対面の相手にどういう態度と言動してるんだ?小さい時習わなかったか?」
ピキッとギルドマスターの額に青筋が浮かぶ。
「おい小僧、良い度胸だな?」
「そっちこそ、奥さんとお子さんに隠れてクソッタレな事をしでかしておいて⋯⋯いいご身分だな?」
「なっ、なんだと?」
「お前の名前はギルドマスターマッセロ。奥さんの名前はユリエ。それからお子さんのお名前はノンナ。最近の家庭の噂は⋯⋯」
「きっ、貴様!!一体何なんだ!只者じゃないな!?どこの者だ!」
真っ赤にして何言うかと思ったら。
「何って⋯⋯人様にそんな態度を取っておいて⋯⋯まさか自分に返ってくるなんて思わない理由はないだろう?」
「きっ、貴様⋯⋯!」
「あっ、ちなみに懐に入れている金の場所は⋯⋯⋯⋯」
「わっ、悪かった!!この通りだ!」
ギルドマスターが誠意の土下座をするが、俺は話を聞かずに続ける。
「すまないが、俺は最初から勝てる要素しか持っていないからこういう態度なんだ。まぁ⋯⋯黙っていたら言わないでおいてやるよ」
屈んで土下座をしているギルドマスターを見下ろす。
「証拠もあるし、女の居場所も知ってる。最初から言う事を聞く気なんて俺にはサラサラないんだ。余計な手間が省けて良かった良かった」
「で、では⋯⋯どう致しましょうか⋯⋯?」
さっきとは別人のように掌を合わせてスリスリ媚びる声で尋ねるギルドマスター。
「お互い不正はなかった。な?簡単だろ?」
「仰る通りです!簡単ですね!」
「そうそう。俺はF級冒険者という劣等冒険者の看板が欲しくてこの位置付けに居るんだよ。口添え頼むよ、な?」
バタン。
よし。これで安心安心。
降りた先には荒くれ者たちが異様な視線を向けられていた。
⋯⋯なんだ?
「C級ダンジョンを攻略したのは本当みてぇだな」
若い茶髪の青年を筆頭に数人が立ち上がって俺を囲んだ。
「それで?⋯⋯何か?自分の勢力に欲しいってか?」
「良い度胸だ────」
軽いお遊びの裏拳をヒョイっとやったつもりが、傍から見たら弾丸みたいな一撃になってしまい、凄い勢いで壁にぶつかった。
「⋯⋯は?」
「とりあえずそんな訳だ。お前らみたいな雑魚の相手なんてしてられねぇからそこをどいてくれ」
「言わせておけば──っ!」
殴りかかってくるのだが、今のを見ていなかったのだろうか?アホなのか?
「ちなみにだが、俺は優しくないぞ?」
「うるせぇ!!殺れ!」
「短気すぎるだろ、お前ら」
壊道──。
神門創一が作った⋯⋯いや、改良し完全に人を壊すために作った古式柔道をベースとした総合古武術の危険な技ばかりを集約した神門創一がよく使用する武術である。
上から殴りかかってくる一人は頸動脈を指捉え、数回の指圧によって一瞬動きが鈍る。その隙に腕をつかむ。
もう一人も同じく。二人の腕を掴んだガゼルは特殊なやり方で回し、空へと上に向かって軽口投げる。
すると数十回の回転ともに骨の砕ける音がギルド内を完全に支配する。
数人のうちリーダー格の青年以外は地面に崩れ悲鳴を上げていた。
「終わりか?」
「つ、強え⋯⋯⋯⋯」
「お前が何級なんか興味はないが、こんなところでイキがってるくらいだから大したことはないのだろう」
キーン。
ガゼルは煙草に火をつける。
「お前も色々あるのかないのか知らんが、精々今の内に養生しておく事だな」
「は?なんの事だ」
「⋯⋯近い内それも分かるだろうな。お前らにとっては最悪で、俺にとっては天国みたいな話だ、それじゃあな。もう会わないだろうけど」
そう言ってガゼルはカルデア冒険者ギルドに背を向けた。
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