91 / 105
異世界転移編
人騒がせな男
しおりを挟む
「では報告を⋯⋯⋯⋯」
会議室での出来事。
コの字型テーブル着席している数人が順番に成果報告をしていた。
それぞれの店舗重役責任者が話している中、現在は最後の総括であるガスパルが締め括ろうとしていた所だった。
片肘をつき、ガゼルは指で机をトントン退屈そうに重役数人が話す報告を黙って聞いていたが。
「と、現在の懐はこのような⋯⋯⋯⋯」
「退屈だ」
「⋯⋯は、はい?」
「ガスパル。俺は言ったはずだぞ?帳簿を見れば分かることを一々俺に伝える必要はない。ウチの情報担当に言えばどうにかなる事だからな。
俺がわざわざ報告会を作ってまで開いたのは、トラシバ、そしてカルデアで比較した時の客層の違いや商品、傾向、数字だけでは表しきれない現場にいる者の情報と結果だ。お披露目会がしたいならここまでしなかった」
「も、申し訳ありませ⋯⋯⋯⋯」
「何度言ったらわかる?謝罪は俺の前では一切いらない。行動で示す⋯⋯。 俺が上でいる限りはそれを頭のすべてに叩き込め」
「も、は、はい!!」
「⋯⋯それで続きは?」
***
裏で進めていたトラシバ、カルデア担当の飲食店⋯⋯"居酒屋ラクテン"
子どもたちに叩き込んだ接客、現場判断能力、記憶力、コミュニケーション力、人身掌握術。
まだまだあるが、ガゼルを始めとした情報と基本接客となる基礎を埋め込んだ少年少女たちのレベルはこの異世界という枠組みでは最強と言っても過言ではない。
「全店舗での評価、SSでございます」
「よくやった!結果を一番残している場所へは他のところとは別に追加報酬と新たらしい教材を送ろう」
"ありがとうございます"と、重役の一人が席を立って綺麗なお辞儀をする。
「情報はどうだ?上手いこと運んでいるか?」
「全店舗の総集した報告書は既に情報担当のあの方に提出済みです」
「そうか。変わったことなどあるか?俺が一番知りたいのはそこだ」
「注意を張って取り組んでいることですが、今のところ目立った情報はありません。ただ⋯⋯」
「ただ?遠慮する必要はない。細かな情報が必要だ」
「最近どうやらガゼル様の噂、奴隷の方々がC級ダンジョンを踏破した事での話が至る所から出ている形です」
「何だ、重要な話だ。前向きな方なのか?」
「はい、しかし一部勢力があまりよく思っていないようです」
「だろうな。何処だ?」
「カルデア領主の息子、オリアン・フゥン・カルデアです」
「ほう⋯⋯」
ガゼルは煙草に火をつけてまたも指で机をトントン叩く。
「最近ストレス値がとても高まってしまってな」
「⋯⋯はっ?」
「決めた。ソイツ破滅させるぞ」
ピクニックに行こうと言わんばかりの軽口である。全員の目付きは本気かと言いたげに下を向いた。
「よし、事を急げ。詳細は追ってアイツから行かせる」
その場にいる全員が大きな声で返事を返し、会議は締め括られた。
「ガゼル様!」
誰もいなくなった会議室に残ったガゼルにガスパルは尋ねた。
「実は折行ってご相談が⋯⋯」
「おー、どうした?」
「先程は報告でしたので別件なのですが、店舗を増やす事はお考えでしょうか?」
「今の所は全く無いが、増やしたいのか?」
「いえ!ガゼル様の意向をただ私どもは付いて行かせていただくのですが、従業員がかなり優秀な者が多く、大半の従業員が余ってしまっている状態なのです」
「おぉ、それは考えていなかったな」
子供の習得レベルの早さを侮ったか。
「確かにそれは早急にどうにかしないといけない問題だな」
「もし可能でしたら、ウィーレェンの方に置かせてはいただけませんか?」
「理由は?」
「大陸でもウィーレェンは珍しい人脈、海の街ならではの物品や食物があります。早い段階で手を打つ必要があるのではないかと弟と考えておりまして⋯⋯」
少し外を見ながら考えているであろうガゼルは小刻みに頷く。
「準備や市場調査は終わっているのか?」
「はい!すぐに本腰を入れる事は可能でございます」
「追加の話も追って連絡させるから、決定のつもりで進めろ」
「はっ!有り難きお言葉でございます!」
バタン、とガスパルが会議室から出ていくと、ガゼルは煙草に火をつけた。
さて、教えてやる異世界人ども。
一吸いして机に足を交差させて乗せ、上に向かって細く煙を吐く。
「魔法なんて無くても、幾らでも手があるぞ?」
悪魔の笑みを浮かべガゼルはこれから訪れる災害の被害者の事を思い浮かべて心の底から嘲笑っていたのだ。
会議室での出来事。
コの字型テーブル着席している数人が順番に成果報告をしていた。
それぞれの店舗重役責任者が話している中、現在は最後の総括であるガスパルが締め括ろうとしていた所だった。
片肘をつき、ガゼルは指で机をトントン退屈そうに重役数人が話す報告を黙って聞いていたが。
「と、現在の懐はこのような⋯⋯⋯⋯」
「退屈だ」
「⋯⋯は、はい?」
「ガスパル。俺は言ったはずだぞ?帳簿を見れば分かることを一々俺に伝える必要はない。ウチの情報担当に言えばどうにかなる事だからな。
俺がわざわざ報告会を作ってまで開いたのは、トラシバ、そしてカルデアで比較した時の客層の違いや商品、傾向、数字だけでは表しきれない現場にいる者の情報と結果だ。お披露目会がしたいならここまでしなかった」
「も、申し訳ありませ⋯⋯⋯⋯」
「何度言ったらわかる?謝罪は俺の前では一切いらない。行動で示す⋯⋯。 俺が上でいる限りはそれを頭のすべてに叩き込め」
「も、は、はい!!」
「⋯⋯それで続きは?」
***
裏で進めていたトラシバ、カルデア担当の飲食店⋯⋯"居酒屋ラクテン"
子どもたちに叩き込んだ接客、現場判断能力、記憶力、コミュニケーション力、人身掌握術。
まだまだあるが、ガゼルを始めとした情報と基本接客となる基礎を埋め込んだ少年少女たちのレベルはこの異世界という枠組みでは最強と言っても過言ではない。
「全店舗での評価、SSでございます」
「よくやった!結果を一番残している場所へは他のところとは別に追加報酬と新たらしい教材を送ろう」
"ありがとうございます"と、重役の一人が席を立って綺麗なお辞儀をする。
「情報はどうだ?上手いこと運んでいるか?」
「全店舗の総集した報告書は既に情報担当のあの方に提出済みです」
「そうか。変わったことなどあるか?俺が一番知りたいのはそこだ」
「注意を張って取り組んでいることですが、今のところ目立った情報はありません。ただ⋯⋯」
「ただ?遠慮する必要はない。細かな情報が必要だ」
「最近どうやらガゼル様の噂、奴隷の方々がC級ダンジョンを踏破した事での話が至る所から出ている形です」
「何だ、重要な話だ。前向きな方なのか?」
「はい、しかし一部勢力があまりよく思っていないようです」
「だろうな。何処だ?」
「カルデア領主の息子、オリアン・フゥン・カルデアです」
「ほう⋯⋯」
ガゼルは煙草に火をつけてまたも指で机をトントン叩く。
「最近ストレス値がとても高まってしまってな」
「⋯⋯はっ?」
「決めた。ソイツ破滅させるぞ」
ピクニックに行こうと言わんばかりの軽口である。全員の目付きは本気かと言いたげに下を向いた。
「よし、事を急げ。詳細は追ってアイツから行かせる」
その場にいる全員が大きな声で返事を返し、会議は締め括られた。
「ガゼル様!」
誰もいなくなった会議室に残ったガゼルにガスパルは尋ねた。
「実は折行ってご相談が⋯⋯」
「おー、どうした?」
「先程は報告でしたので別件なのですが、店舗を増やす事はお考えでしょうか?」
「今の所は全く無いが、増やしたいのか?」
「いえ!ガゼル様の意向をただ私どもは付いて行かせていただくのですが、従業員がかなり優秀な者が多く、大半の従業員が余ってしまっている状態なのです」
「おぉ、それは考えていなかったな」
子供の習得レベルの早さを侮ったか。
「確かにそれは早急にどうにかしないといけない問題だな」
「もし可能でしたら、ウィーレェンの方に置かせてはいただけませんか?」
「理由は?」
「大陸でもウィーレェンは珍しい人脈、海の街ならではの物品や食物があります。早い段階で手を打つ必要があるのではないかと弟と考えておりまして⋯⋯」
少し外を見ながら考えているであろうガゼルは小刻みに頷く。
「準備や市場調査は終わっているのか?」
「はい!すぐに本腰を入れる事は可能でございます」
「追加の話も追って連絡させるから、決定のつもりで進めろ」
「はっ!有り難きお言葉でございます!」
バタン、とガスパルが会議室から出ていくと、ガゼルは煙草に火をつけた。
さて、教えてやる異世界人ども。
一吸いして机に足を交差させて乗せ、上に向かって細く煙を吐く。
「魔法なんて無くても、幾らでも手があるぞ?」
悪魔の笑みを浮かべガゼルはこれから訪れる災害の被害者の事を思い浮かべて心の底から嘲笑っていたのだ。
0
お気に入りに追加
874
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる